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「…織戸、そっちのクリアファイル、俺が持つよ。」
落合が、妙に同期の織戸を手助けするのだ。
(落合の癖にフェミニスト炸裂しやがってからに…。)
我妻は仕事そっちのけで、背を低くしてノートパソコンの影から二人の様子を逐一観察していた。
現在、落合は織戸の連れとしてコピー機にまで一緒に足を運んでいる。…我妻が握っていた赤ペンが、ぱきめき…と乾いた音を立てて軋む。
(コピー機に補助なんていらねぇだろ、ド阿呆!!さっさと帰って自分の仕事しやがれってんだ、このウスノロ!!)
我妻から罵倒されているのに気づいていない部下は、織戸がコピー機を操っている様子に興味津々だ。当然か。我妻は、遠くで歯ぎしりを始める。
(今日の織戸は、よりによって落合の好みど真ん中の姿だもんな。)
織戸は160前の小柄な上に、髪型はツインテール。更には、落合に迫っていった歴代の女と同じ清楚な雰囲気も持ち合わせていて…部下としては、非常に恋愛対象として見やすいはずだ。
「落合君、今日はなんか色々助けてもらってありがとう。」
コピーは終わったらしい。織戸は胸の前に書類を抱いた格好で、頭を下げる。…だが、落合は反応しない。どこか横顔が虚ろだ。
「落合君…??」
織戸が戸惑った、瞬間。ピラリ、と床に書類が一枚落ちる。我に返った落合と落としたのに気がついた織戸が同時に屈み込む。
二人の手が、一枚の薄い書類上で重なり合う。
「ぐぅ…っ!!」
絵になる男女のワンシーンに、我妻は我慢できず呻く。周囲の視線が我妻に突き刺さる。年上の男は、コピー機から目をそらし、瞬きを一度する。…もう、我慢ならなかった。落合達が席に戻る頃合を待って、上司は口を開く。
「落合ィィィッ!!」
オフィス全体がざわついた瞬間だった。落合が怒号の方を向いた時には、すでに鬼上司は彼の片腕を握っている。…鬼の指の爪が腕にくい込むほど強く。鬼上司は彼を求めていた。
「お前、取引先に何つー杜撰な応対してくれてんだ、オラァァァッ!!」
怒号はビリビリと空気を震わせ、周囲の社員も思わず顔を背けて知らんぷりを決め込む。
織戸だけが唯一、彼らの行方を不安そうに見守っていた。…ちなみに、水越は懸命に般若心経を唱え、気を落ち着けていた。
「え??え!?…あああ、我妻さんッ!?」
いつだってへっぽこな部下は、両腕をわらわら動かして、とりあえず目前の人物の気を沈静化させようと試みていた。
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