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けど、とYシャツの袖の端を引っ張る我妻に、部下は出来るだけ明るく微笑んでみせた。
「俺は、我妻さんが傍にいてくれたら大丈夫ですから。」
そっと我妻を押しのけ、後輩はドアを開け放つ。そこには…よく見知った顔があった。
「お、と…。織戸??」
織戸が腰を抜かして、会議室前の廊下にへたりこんでいる。落合は混乱しつつ、とりあえず細かく震えている彼女の傍らに屈み込む。続けて、介抱しようと手を差し出した。
刹那。
ぱぁんっ、と織戸が落合の手を強く弾いた。あっけにとられる落合に、同期の女性は声を荒げる。
「触らないでよ、この変態ッ!!」
途端、落合は頭が真っ白になる。…織戸は、まだ何事かの衝撃から立ち直れないらしく、ブツクサと早口で呟いている。
「なんで…なんでなの…。」
「織戸、いや、織戸さん。話を聞い…。」
再び腕を伸ばすも、落合は彼女に触れるのを拒まれる。
「…わかった。」
織戸は足をがくがくと震わせながら、その場から立ち上がり。指を胸の前で組んで、彼女は落合にぽっかりと空いた底なしの穴のような目を向けた。
「落合君は、わかっていたんだ。私が、落合君を好きだって。」
「え…。」
途端、落合は頭の中が真っ白になる。
(織戸が、俺を好き…??)
彼女はいつも乱れ一つないポニーテールの頭を掻き毟り、金切り声を上げる。
「だから、あたしを嫌って、我妻と一芝居打ったんだ。…じゃなきゃ、意味わかんないもん!!」
「ちがうッ!!」
落合は腹の底から怒鳴った。…決して、自分達の仲を誤解されたくなかった。付き合うフリでもごっこでもない。遊びなんかじゃない。二人は、本気で身を寄せ合って生きていこうと決めたのだ。
「俺が…俺があの夜に我妻さんを無理矢理抱いて、それから全部狂ったんだ。俺のせいだ。俺が、我妻さんとの関係を歪めたんだ。」
「落合君が…。」
はは、と織戸は口元だけで薄く笑う。目は…純粋に開かれたままだ。
茫然と立ち尽くす部下の背後に、ゆらりと我妻が会議室のドアから顔を覗かせる。織戸の双眸が絶景を捉え、頬が満足そうに緩む。
「いい気味!!我妻の野郎、部下に襲われて抱かれた挙句、ズルズル付き合いだしたんだ??気色悪いオカマ!!部下食いの色狂い野郎!!」
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