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「お互い、本気なんだね。困ったな、私が立ち入る隙なんかありそうにない。…純愛、だね。」
「…そっ、そっかな~…。」
柄にもなくドギマギしてしまう落合だった。
室内に引っ込むと、待っていたのは備品の新しいタオルを持った水越だった。なんで、と落合が問いかける前に、同期は織戸の頭にタオルをかぶせ、上からわっしわしと拭きだす。織戸の派手な悲鳴が上がる。
「きゃっ!!いきなり、視界を塞がないでよっ!!こんなイタズラするの、どうせ水越君でしょ!?」
引っ繰り返った声で怒る織戸に、水越は肩を竦める。
「…お前、女の子なんだから、ちっとは自重しろ。」
「何よ、もう~っ!!」
「服、雨で透けている。」
自分で服装を確かめて、織戸は絶句し、その場に屈み込む。だから言わんこっちゃない、と水越は肩を竦めてみせた。
「ロッカールーム行って、着替えて来い。」
我妻さんが呼んでいる、と水越はさらりと言うと、階段を下っていく。
「おっ、落合君、私は最後に階段を下りるから!!先に、お先にど~ぞ!!」
服が透けている点を気づいた織戸は、顔を真っ赤にして羞恥に耐えている。落合は不謹慎ながらも小さく吹き出して、織戸の頭に手を乗せた。
「…言い忘れていたんだけど。」
俺は今のままの我妻さんが好きで、と落合は続ける。織戸は唇を尖らせる。
「ちょっと…。惚気なら水越君にでも言って…。」
「織戸も、そのままで十分魅力的だよ。」
「…へ、へぇ??」
そっぽを向く織戸に、落合は柔らかく笑ってみせた。
「だから、ありのままの織戸を好きになってくれる人が、いつか現れるといいね。」
去っていく落合の後ろ姿。眺めていた織戸の視界が、不意に涙でぼやけていく。だったらさ、と織戸も相手に言い返す。
「落合君だって、人のこと言えるの??仕事一直線の我妻さんが、社内であんな風にべったりになるぐらい、寂しいって思わせちゃダメでしょう??」
えっ、と落合の顔が語る。織戸は余計なお世話と思いながらも、助言を付け加える。
「好きって言葉にしなきゃ、本人が表さなきゃわかんないよ。同性でも、恋人や夫婦だってそこは変わらないんじゃない??…きちんと言わなきゃ、相手はわかんないんだからね。」
ああ、と落合が曖昧な答えを返す。彼の影が次第に遠ざかっていく。
「何よ…。朴念仁落合仁め。」
言いたい放題、自分が口にした後で、最後にかっこつけるんじゃないわよ、と窘めて織戸はきゅっと唇を結んだ。
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