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告白できてないしッ、と言いかけた落合はパッと自らの口を手で塞ぐ。…彼の様子を見て、上司は不機嫌そうに眉を寄せる。
「…何だよ。ここ、お前ン家だろ。別荘でもあんのか。」
「ううう~…。違いますけどォ~…。」
本日は何故か全く格好のつかない落合だった。
「さっさと降りるぞ、ほら。」
図体のデカい部下を押しのけ、先に颯爽と下り立った我妻から手を差し出され、年下の男はキョトンとした顔をする。
「…え。あの、我妻…先輩??会社には戻らないんですか??」
「はァッ!?」
大ボケかますな、と言いおいて我妻は腰に手をあてる。
「この俺が、部下を家に帰すまで付き添いなんて無駄な真似をやるかよ。有給もらって、今日は半休。役立たず部下の面倒を見るために、これから先は休み。」
金曜は、と目を伏せて、年上の男は微かに身じろぐ。
「…お前との、逢引の約束があるだろうが。」
(何かこの人、俺が迫り出してから漢気上がってない??)
あっけにとられる部下に、我妻は『とっとと車から下りろ』と高飛車に要求してみせた。
好きな人を前にすると、どうにも身体の制御が億劫になる。
普段よりぎこちない手つきで鍵を開け、玄関扉を開け放つ。落合が一歩を踏み出して、ただいまと唱えると上司も釣られたのか。お邪魔します、と小さく呟く。
(…あっ。そういや。)
落合は廊下の途中で自らの鞄を探って、薄い茶封筒を見つけ出すと、上司に差し出す。今晩、一緒にいる証。
「一万円です。…どうぞ。」
我妻は、何故か茶封筒を食い入るように見つめ、そろりと指先を伸ばす。両手で茶封筒を持ち、やがて男はぽつんと呟く。
「…落合、さ。お前、確かタバコとか吸ってねぇよな??」
話の脈絡がわからず、部下は問われた通りに首を傾げてみせた。
「え??はあ、まあ今は。…学生の頃、友達に唆されてちょっとやっていましたけど。結局、値上がりに悲鳴が出てやめました。」
「ふぅん…。じゃあ、ライターとかこの家にねぇの??」
ダイニングで二人が上がり込んだ後で、落合はポンと手を打つ。…宝の在り処を思い出した。
「ああ、ライターなら持っていますよ。捨てようと思ってはいるんですけど、油も残っているし、もったいなくって。」
「おっ、いいじゃん。ライター、一本貸してくれよ。」
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