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呆けて落ち着きを取り戻した伊織は、嫌な汗を流すため起き上がって部屋を出た。まだ早朝で静まり返った家の中、息を殺して浴室まで急ぐ。
高校生にもなれば立ち位置が分かって、父との接し方も確立された。なるべく家族と波風立たせず、本音は奥底にしまい笑みを貼り付ける。自分なりの処世術だ。戸籍上は家族の括りに入っていても、借り暮らしをしているようなものである。
諦観しているくせに、それが悲しくもあった。
だからといって、不幸だとは思わない。気心の知れた友達がいて、毎日それなりに楽しく過ごしている。素行の悪さに磨きをかけているが、内面的な部分はごく普通の男子高校生となんら変わりないだろう。類は友を呼ぶなんて聞くが、確かに年来の友達とは似通っていた。
伊織の良い噂はそこそこ、悪い噂もそこそこ。人当たり良く、のらりくらり平々凡々と過ごしているからだろう。勉学だって熱を入れてないものの、テストの点数は平均を維持している。最低限やることはやっている、というのが伊織の主張であり言い訳だった。
それも、いつ切れるか分からない最後の繋がりを守るためだ。文字通り家族の一員になれはしないが、義務のような情けのようなものに縋り付いている。彼らに家族として受け入れてもらえなくとも、父から完全に見放されていないだけマシだった。
脱衣所から浴室へ移動すると、勢い良く流れ出る冷水を頭から浴びる。次第にお湯へ変わっていき、やりきれない気持ちを振り切った。
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