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★★★★★★ 君が悲しみに泣き叫んだあの夜も、どこかの誰かは愛に癒されていたんだって、 ☆☆☆☆☆☆
★眠れる森の大学生たち
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★眠れる森の大学生たち
中学と高校が一緒だった。でもべつに友達じゃなかった。
友達の友達、の横にいたりいなかったりしたのが日坂で、大学ですれ違ったとき、あいつは俺をスルーしようとした。
まあ、そりゃそうだ。
「日坂?」
「………あ、うん、……えーと………」
困ってる。
「……へー。日坂もここだったんだ」
「……うん………あ……政経?」
俺の抱えてた教科書を見て日坂は言う。
「うん。日坂は?」
「哲学」
「うわ、ムズカシー。はは」
「…………あはは」
「俺のことわかる?」
「あーうん、アキヨシ達とつるんでた……」
「……………」
「……………」
「笹川です」
「あっ、う。ささがわくん」
なにしろ奴は、俺の名前すら知らなかったのだから。
それからなんやかや。俺がぐいぐい会いにいって遊びにつれ回して、なついた。
テツガクなんてお勉強しちゃう日坂はやっぱ変わってて、基本的におとなしくて友達もそんな要らないし、遊びもあんま求めてないしって子だった。だいたいは難しい本を読んでいた。
拒まないので日坂のアパートに入り浸った。ゲームもテレビも漫画もなくて、片付きすぎた部屋には大量の哲学書があるだけだった。
「日坂さー、ちゃんと飯食ってる?」
「食べてるよ」
冷蔵庫にはだいたい牛乳と納豆と卵しかなくて、いつも俺にはコーヒーをいれてくれた。酒はない。
横で寝てる日坂の乳首を舐めたのは、どしゃ降りの日曜の朝だった。
昨夜から暴風雨。外は変に明るくて白くて、日坂はなかなか起きなかった。
「日坂ー。起きて」
「…………」
「ひっしー。ひーちゃん」
「…………………」
揺すったら目を開けたけど、また閉じた。
「ひーちゃん、腹減ったー」
「…………てきとに…………なんか。して」
「一緒に食べようよ」
「………………………」
「あ、寝やがったこいつ」
「…………」
「日坂さーん。……起きなかったら俺の朝勃ちちんこ押しつけるよー」
「……………ん゙ん」
「いやでしょ?」
「んー」
呻く声が多彩で、ちんこを押しつけた。
「ん、ん゙んん………」
「あはは…………」
唇がかさついていた。言いたいことはやまほどあって、一気に押し寄せて一気に消えた。
日坂は服を剥いでもおとなしかった。
「………寒い」
「あっためてあげる」
「…………んー」
「日坂」
「…………んー?」
「なんで嫌がらないの」
「!…………………ねむ、い、から……」
綺麗で小さな乳首に口をつけた。ビクッと跳ねた身体。それでもまだ日坂は目を開けない。
「日坂。目ぇ開けて。俺を見て」
「…………やだ……」
「なんでだよ」
「こわ、い、から」
「なにが」
「…………笹川くん」
怖いと言われて軽く落ち込む。
「…………おまえが起きないからじゃん」
「…………ちが。ずっと………怖い」
「ずっと?…………ってなに、おまえ今まで俺といるとき、ずっとそう思ってたってことかよ!」
「だ、だって笹川くんっ……なんか違うんだもん、他の人と」
「はあっ?」
「………………っな、んで、俺なの。アキヨシでもハルキでもキノシタでもなくて、」
「は? は? なんの話?」
「あんな目で見られたら俺だって意識するよ!」
ずっと。
中学と高校でもクラスが一緒になることはなかった。直接言葉をやり取りするなんて年に一回あるかないかだった。日坂は友達の友達の横にいたりいなかったりで、女だ食いもんだカラオケだ流行りの服だと騒ぐ俺らと違って、だいたい教室のすみか図書室にいた。
それでも、いれば目があった。
…………俺が見てたから。
「な、まえも知らないし、関わってもこないし、イジメられんのかと思ったらそうでもないし、なんだろって気になってて、お……俺のことどうしたいんだろうって、ずっと」
かたくなに目を開けない日坂はよく喋る。
「考えてて。……大学同じなのも知ってた。入学式のときから知ってた。でも学部違うから会わないだろうって、でもやたら見かけて、…………違う。俺が視界の中に笹川くん探してんだって気付いたらもう堪んなくて……」
「…………」
「……………そしたら廊下で会っちゃうし、話しかけられるし。俺は名前すら知らなかったのに笹川くんは知ってて、ああもうなんだこれって、そっから距離近いし、ぐいぐいくるし」
「……………日坂」
「で、でもなんか普通だし、俺だけがおかしいのかよ。きっかけはそっちだろ。なんで俺だけがこんな」
「日坂。目ぇ開けろって」
「やだ、怖い」
「……………女にするような目でおまえのこと見てたよ、ずっと」
「!」
キスをしたら目をさますのは誰だっけ。
重ねた唇だけがやたら熱くて、くらくらした。
「おまえのこと最初から友達だなんて思ってない」
外は大荒れの天気模様。
日曜はベッドの上で過ごした。
★終
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