アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
ロミオとジュリエット 17
-
「はい。おはようございます。」結が、iphoneを取った。
「道ノ瀬さん、楠本です。今ご自宅ですか?私は玄関の前にいます。開けていただけますか? 大変なんです、週刊Bezのネット版に、道ノ瀬さんのスキャンダルが出ています!」
「えっ!?」
結が、ベッドにあった水色のガウンを慌てて着る。襟を深く合わせ、壁にかかった大きな鏡で、急いで髪を手櫛で整えると、玄関の方へ出て行く。
振り向きざま私に言った。
「楠本さんは玄関で帰らせますから、絶対に出て来ないでください!」
玄関のドアが開く音が私のいるベットルームへ聞こえて来た。
「これ、見て下さい。」
「これは…。」結が驚いている声がする。
楠本氏は、タブレットかスマホの画面を結に見せているのかもしれない。
私は、ベッドから足を下ろしスラックスを履く。そして、結が用意してくれた室内履きを履いた。
「道ノ瀬さん、Bez誌を名誉棄損で訴えますか?
”道ノ瀬結、初熱愛報道、相手はなんと男性か!?”こんな記事書かれたら、スポンサー企業は黙っていませんよ!」
結は、固まった。
「…、」結は無言だった。結が硬直したのが目に見えるようだ。
「道ノ瀬さん?…、この写真ご覧ください。この写真の日付10月22日早朝、場所はドイツフライブルク駅近くとあります。
ブラオミュンヘン戦で、ゲストとして道ノ瀬さんがフライブルクにいらした時ですね。
車中で抱き合う、大柄な男性のシルエット、これ…もしかして…、東郷監督ですか?」
結は、楠本さんの問いに沈黙している。
「東郷監督と、朝までご一緒だったのですか?
道ノ瀬さん、試合後の東郷監督との対談後、あなたは監督と食事しただけで別れたと仰いましたね。
その晩、ホテルにおひとりで泊まられたのですか?
私が、予約したホテルには現れなかったのではないですか?」
それも、結は否定しなかった。
玄関では、楠本が道ノ瀬結をじっと見ていた。
楠本が、玄関先の床に視線を落とす。
視線の先には、革靴がある。 そして、ゆっくりと、道ノ瀬に視線を戻す。
「その革靴、道ノ瀬さん、あなたのではありませんね。私は、マネジャーなのであなたの靴のサイズは良く存じています。」
「…。」
「道ノ瀬さん、私に、何か隠しごとをしていらっしゃいますね?」
「楠本さん、僕はこの週刊誌の件に関し、…シラを切りとおします。楠本さんも、あの日、僕が東郷監督と出かけたことは、誰にも言わないでください。絶対に。」
道ノ瀬は、バスローブの襟を合わせ、首元を隠すように手で掴んだ。
「そんなことではすみませんよ。もうネットを通じて世界中に回り、日本では週刊Bez誌に掲載されてます。」
「…僕が…、誘ったんです。東郷さんのファンだったから!」
結の声は、苦しげだった。
「道ノ瀬さん、あなたは10社ものスポンサーが付いているのですよ。契約を違えた、と言うことですか!?」
「結は、私をかばっているのだ。」
私は、寝室から出てリビングの入口で言った。廊下に続き、結たちがいる玄関が見える。
「東郷監督っ!?」楠本氏は、私の姿を見て仰天した。
「東郷さん!」結も驚いている。
結は素肌にガウンと言うしどけない姿、私はスラックスにシャツの前がはだけると言う、情事の後だと言うのがバレバレだ。
「楠本さん。大変申し訳ないが、私と結はお察しの通りの関係です。今回記事に書かれてしまったのは、私が週刊Bez誌の諸橋記者を怒らせたことがすべての発端だ。すべては私の責任です。」
「いいえ、東郷さん!」結が口をはさむ。
「おふたりとも、これはただではすみませんよ!」
「楠本さん、週刊Bez誌は結のスキャンダルをでっち上げるような雑誌です。そんな連中に、大事な”道ノ瀬結”を食い物にされていいのですか?」
「しかし!」
「楠本さん、あなたも結のマネジャーなら、結を守ってください。
結は、親元を離れパリで過酷な練習に耐え、世界的なバレエダンサーになったのですよ。
私はその頃、もちろん結を知るよしもなかったが、結はこの私を支えにしてくれた。
これからは、私が結を支えるのです。
私に考えがあります。楠本さん、あなたも、私たちの関係を知った以上、協力していただきます。」
「東郷監督…。」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
17 / 71