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ロミオとジュリエット 23★
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翌日、私はまだ、パリの結の自宅にいた。
昨日、昼過ぎに結の両親に会い、その後結を抱いた。
たぶん私が経験した中で、1番優しいSEXだった。 その後、私たちは片時も離れず、一夜を過ごした。
結の主治医は、彼を刺激してはいけないと言ったが、結は心から私を求めた。
彼を拒絶することは、結の精神状態に良くないことだったと思う。
彼を拒めば、それが結にとって辛いものとなる。
安らぎを与えるために、抱き合ったのだ。
くるむように抱きしめ、何度も髪を撫でてやった。
一夜明けて、結はまだ生まれたままの姿で、私の腕の中で眠っている。
結局、ソファベッドを持ち出して抱きあったまま寝てしまった。
透き通るような白い肌に、頬や耳たぶに赤みが戻って来ている。
眠っている結の前髪にキスし、頬にそっと指で触れてみる。
昨日の病人のような心身状態から、回復したかのように見える。
結が、目を覚ました。
眠気まなこのまま、私に子供のようにすりついてくる。
結は朝食後、薬を飲むのだろう、食事させねばなるまい。
テーブルの上に、朝昼夜の処方箋の薬が置いてあった。
「結、起きられるか?」
「んん…。」
私が起きて、ほどなくして結も起き上がった。
「…バスタブにする?シャワーにする?」結が、ガウンの袖に腕を通しながら、私に聞いて来た。
そうだ、愛し合ったまままだ湯を使っていない。
結は、だいぶ元気そうだ。
「シャワーがいい。」
風呂に入るとまた眠くなりそうなので、シャワーを希望した。
シャワーのコックをひねると、熱いシャワーが朝の肌に気持ちいい。
「早くおいで、結。」
「え?一緒なの?」
「洗ってあげるから、さあ、おいで。」
「まさかと思うけど、今朝はもう、その…僕、出来ないからね。」
結が、扉の向こうで言っている。
「そうではないから、早く。」
結の昨夜の”中の後始末”をまだしていないんだ。
ドアの曇りガラスの向こうで結が、脱いでいるのが見えた。
すべてを脱いで、バスルームに入って来た結に、ひと通りシャワーをかけてやる。
「結、ちょっと私の首に手を回して掴まっていてくれ。」
「こお?何で?」
「動くなよ。」
シャワーの湯を少し温度を落とす。
結の後ろに手を回し、尻の間に手を入れ、蕾をさぐりあてる。
「うあっあ!!」
いきなり指2本突っ込まれた結は、悲鳴を上げた。
その2指を少し開き、シャワーの湯を下から当ててやる。
「いや、いやっあっああっ。」
「動くなって、私に掴まっていろ。」
「ああっ!んっ、…。東郷さんの…、その、…出しているの?」
「そうだ。」
「出したくない!」
「は?…、結、こら、力入れるな。指が抜けなくなる。」
「せっかくもらったのに!」
もらったのに、って結…。
顔から火が出そうなことを、結は鬼の首取ったかのように自慢げに言う。
「異物が入ると、生物の身体は拒否反応が起きるんだよ、具合悪くなったら困るだろ。」
「ならないもん!」
「とにかく、力抜け、締めるな。」
「出さない!」
朝から、バスルームで私の”指が挟まれる”と言う珍事が起きたが、それだけ結が元気になって来たと言うことだ。
キッチンで二人で朝食の支度をした。
結が、冷蔵庫を開けている。
「ショコラパン、ベリーとラム酒のパンが冷凍庫にストックしてあるんだ。 東郷さん、オーブンを10分にセットして。」
「ん。」
「近くの店のなんだけど、美味しいよ。東郷さんちみたいに豪華な朝食は作れないけど。」
「朝食は、ジップが作っているんだ。ジップはタイで私は日本、2人ともアジア人だ。食事は、アジアの方がヨーロッパより豪華だね。」
「そうだよね。日本の方が温かい料理多いし。」
「そう、ドイツも温かいの料理は1日1回だな。」
「僕、朝ごはんを楠本さんとオペラ座で食べることあるんだ。カフェの人が持って来てくれるの。
いつもクロワッサンかバケットに発酵バターとジャムに塗って、カフェオレ。フランス人の朝食って普通そんなもの。僕がオレンジジュース好きだから、つけてもらうけど。
今日、ショコラとベリーのパンを食べるのは、東郷さんとの特別な朝だからだよ。」
「そうか。」
私が湯を注いだコーヒーがふくれ、1滴1滴落ちて来た。結との幸せな時間を刻んでいる。
結が、ぶどうを洗って、皿に添えた。
オーブンがチンっと鳴り、ショコラとベリーもパンが焼けた。
「さあ、できた。」
結が、焼き立てのパンを1口食べるとナフキンで口を拭いた。
「実は…、日本のスポンサー10社が、僕のスキャンダルに激怒していているんだ。僕の体調が良くなり次第、日本へ謝りに行くのです。楠本さんが帰国の準備しています。」
「私も、行こうか?」
「そんなことしたら、火に油です。」
「結、君は、スポンサーとの契約書で、会社に著しい損害を与えた場合は損害賠償の対象となるという項目にサインしたと言ったね。」
「はい…。」
「それは、恋愛禁止とはどこにも書いていないじゃないか。」
「口頭で、言われました。」
「ビジネスは、契約書が全てなんだよ。君に損害賠償金請求なんて出来ないよ。」
「でも…、」
「いいかい、結、君は何でも素直すぎる。言われたまま、言うことを聞いていると食い物にされるぞ。時にはずる賢さも必要なんだ。サッカー見てて分かるだろ、綺麗ごとだけで勝てるか?」
「でも、サインしてしまったし。」
著しい損害と言うのは、例えば君が恋愛や結婚したことにより、ファンが激減して売り上げが下がると言うことだろ。
下げなきゃ良いんだよ。」
「SNSで公開しようと思うがどうだ?東郷はバイセクシャルで、道ノ瀬結と恋仲だって。」
「ちょっと、待って下さい、東郷さん!」
「大丈夫だ、結。スクープされたらあっさり認めることだ。その方がファンも納得する。否定して逃げ回ってばれるから印象悪いんだろ。それに、今時LGBTに批判的な方が、非難を浴びる。
こう言っては何だが、私たちがそれぞれ女性と結婚するより、ファンは安心なんじゃないか。
商品の売り上げは落ちないよ。」
「また週刊Bezみたいな週刊誌が、書いたら?あることないこと勝手に書くじゃありませんか。」
「それには、考えがある。君のご両親は、弁護士でいらっしゃるね。」
「そうです。」
「ご両親から、アドバイスをいただいた。」
「うちの両親から?」
「まあ、まかせておけ。」
「週刊Bezに、勝てる?」
「勝てるよ。」
「東郷さん、すごい自信。」
「監督の予言は当たるんだ。」
守備は、ピッチの中だけだと私はずっと思って来た。
だが、体を張ってでも守らなければならないものが私にもできた。
結が、パンの上に載ったいちごを嬉しそうにつまみ、口に入れる。
「すっぱい~。」と言って、私に微笑みかけた。
「朝食後の薬、飲んだか?」
私は、帰り支度をしながら聞いた。
「飲んだよ。」
「じゃあ、行くから。」
「行っていらっしゃい…。」
結が笑顔で言った直後、悲しそうな顔になった。
「そんな顔されたら、出かけられない。」
「”いっていらっしゃい”って言って出かけて、その日の夕方は、”ただいま”って僕の元に帰って来て欲しいんだ。」
「え?」
「毎日、一緒に東郷さんとごはん食べたい…。」
「結…。」
私は、結を抱きしめた。
私だって、結を離したくない。
「結…、私の結!」
「東郷さん、僕を離さないで!」
いっそこのまま、結をドイツの自宅へ連れ帰ってしまおうか。さらってしまおうか。
今の結なら、同意してくれるだろう。
結のしなやかで柔らかい身体を抱きしめながら、玄関に写真立てがあるのが見えた。
バレエ演技中の結の写真だ。少し前のものか?メイクしていてよくわからないが、体つきが子供のような感じがする。
「これは、なんというバレエ?」私が聞いた。
結が、写真の方を振り返る。
「ロミオとジュリエットだよ。17歳で、初めてパリで舞台に立った時の。」
「ロミオとジュリエット…。」
マネージャーの楠本さんが言っていた、”美しすぎるロミオ”と評判だった時のか。
家と家との争いに巻き込まれ、引き裂かされながらも愛を貫こうとするロミオとジュリエットに、私たちも似ている。
結は、”私に逢うために、生まれて来た…”と言った。
週刊誌には邪魔され、その愛をおおっぴらに叫ぶことも出来ず、密かに逢っては、こうして、離れ離れになる。
結は、はたしてロミオなのか?それともジュリエットなのか?
「結…、やはり、私は行くよ。」
「東郷さん、」結が2、3歩追いかけて来て、止まった。
結は、バレエダンサーとして生きねばならない、ここパリで。
結と別れて、私はドイツ・フライブルクに戻った。
自宅ではなく、選手たちが待つトレーニング場だ。
駐車場に、車を停めトレーニング場に向けて歩いていると、スラックスのポケットにあるスマホが鳴った。
+81、03…で始まる番号。日本、東京からだ。
「奇想社週刊Bez編集部の、諸橋です。お世話になっております、監督。」
「貴様…。」
「お陰様で、監督の大スキャンダル記事の先週号、大変売れましてねぇ。ぜひ御礼を申し上げねばとお電話いたしました。」
こいつのせいで、結は深く傷ついたのだ。
私とブラオミュンヘン会長令嬢の結婚をでっちあげ、結を傷つけ、記事にして大金をせしめたのだ。
「ねつ造記事で、金儲けした気分はどうだ?」
週刊Bezは、ブラオミュンヘン会長の娘ローラ嬢と私との合成写真を作って掲載もした。
「ねつ造?、何ですって?聞こえなかったな。とにかくご結婚おめでとうございます、監督。婚約者の女性はおめでたなんですってね。
道ノ瀬結がいくら綺麗でも、所詮男ですからね。でも、そんなに”あっちの具合”良かったんですか、あのバレエダンサー?」
「諸橋記者、今君が目の前にいたら、殴っている。」
「目の前にいませんから。遠いですよ、日本とドイツは。笑
次号に、またスクープ載せますよ。ローラ嬢の少し前のスキャンダル写真見付けたんで。」
「何だと?」
「2日後発売の紙面に載せますよ。”東郷監督と婚約した会長令嬢、別のボーイフレンドと海でトップレス写真。”」
「諸橋記者、あなたと言う人はどこまで!!」私は怒りがこみあげて来た。
「東郷監督、ご自身はヌード写真出しても、自分の女のヌードは許せないですか?しかも別の男と。」
「君たちには、良心の呵責はないのか?」
「良心の呵責?」諸橋は鼻で笑った。
「我々はね、面白ければいいんですよ。金、利権、女。スキャンダルがあればどこでも行きます。
東郷監督、あなたの周りにはいくらでもありますね。
しかも、地位も名誉もあり品行方正なあなたが起こすから余計、価値がある。我々も限られた予算でやるんでね、売れると見込んだスキャンダルは絶対に放しません。
今回のトップレス写真は。ちょっと古い写真なんですけどね。ネット上にあるクラウドから流出したものなんですよ。8年前くらいかな。まだ若いなローラ嬢。」
「8年前?」
ローラさんは今、確か…。
「見たいですか!?東郷監督?送りますよ。」
諸橋は、歓びを隠しきれないように言った。
「もうすべて、50万部印刷終わっています。あとは書店に並べるだけ!大ヒット間違いなし。首都圏の売店一部ではフライングで出してしまったそうですが。笑」
「諸橋記者、その雑誌、すべて自主回収するんだな。」
「いや、何言っているんですか、監督。笑」
「ローラ嬢は、今25歳だ。8年前は17歳だ。未成年のヌード載せたら、君たちは終わりだ。出版社として終了することになる。」
「え?…、何だって?!」
諸橋は叫ぶように言い、数秒沈黙が流れた後、
「ああああっ!?」諸橋のうなり声が聞こえた後、電話は一方的に切れた。
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