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ロミオとジュリエット 56★
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家宅捜索の検察官は、東郷家にいきなり入って来た。5人の検察官たちは、白い紙面を我々に突き付けた。
「これより東郷製作所社長宅を、コピー機製造、違法の疑いで家宅捜索を始めます。これが捜索差押許可状(そうさくさしおさえきょかじょう)で、捜索は拒否できません。」
「故東郷信司郎社長の書斎にご案内願います。」捜査令状を突き付けた、銀縁が冷たく光る眼鏡の検察官が言った。
「…1階の奥です。」母が答える。
母や妹たち、そして私と結が立ち尽くしている横を、検察官たちは通り過ぎ最初に父の書斎にどかどかと入った。
用意して来た段ボールを組み立てると勝手に詰めだした。
「あ、そちらはパン屋のスペースですけど!」上の妹恵が自宅からパン屋につながるドアを開けた検察官に果敢に言った。
「パン販売フロアも捜査対象です。」そう答えたのは女性の検察官だ。
「なんですって!?ちょっと待って、お店のパソコン、取引先の管理データが入っているのよ!」
「拒否できません。」女性の検察官は他の若い男性の検察官とパソコンのみならず、業務用パン焼きオーブンまで持ち出そうとしている。
「そんな!お店を開けられないじゃないの!」
恵が茫然として言った。
「こんな急にすべてを差し押さえられるなんて、弁護士立ち合いとかはできないのですか?」母も言った。
それを聞いた結が、とっさにiphoneをポケットから出して操作を始めた。手が震えている。
「弁護士の立ち合いはできません。」検察官の声に、結の指が止まった。
先ほどの銀縁眼鏡の検察官が続けて言った。
「ここにいらっしゃる方は、故東郷信司郎社長のご家族でよろしいですね。」
「そうです。」母が言った。
「妻のみどり氏、あなたは・・・長男の東郷悟氏。」検察官は私の顔を知っているようだった。
「長女の恵氏。次女の飛鳥氏。あなたは・・・。」
「道ノ瀬結です。」
「存じ上げております。今、ご両親に連絡を取ることは出来ません。そのiphoneも捜査対象です。」
「えっ?!」結が声をあげずひどく驚いた顔をした。
偶然居合わせた、結にも捜査の手が及ぶのか。
しぶしぶ結を送り出してくれた、パリバレエ団になんと説明すれば良いのだ。
結が私を不安げに見上げた。
私は、結を抱き寄せた。今はそうしてやることしか出来ない。
検察官は、結と結の両親を知っている。
法律家だから、結の親の職業を知っているのか。
父の書斎、パン屋スペース、各部屋、風呂そして、たまたま居合わせた結のリュックの中まで、捜索していった。
捜索は、2時間ほどかかり検察官は出て行った。
すべてが終わった時、夜の11時半を回っていた。
クローゼットからは父の背広や、机の引き出しからは書類が散乱していた。パン屋の調理室は、オーブンが運び出され製粉用の粉袋から粉が盛大にブチ巻かれていた。
なんだ、これは!?
ここまで、我々が虐げられる理由があるのか!?
あまりの理不尽さに、さすがの私も言葉を失った。
片付けたとしても、オーブンがない以上、母と妹はパン屋を再開できない。
私と結、母と妹たちも携帯を持って行かれてしまった。固定電話は通話記録を調べるために同じく運びだされた。
疲れ果てて寝た翌朝、母が私と結にトレーに載せた苺とクロワッサン、コーヒーを部屋まで持って来てくれた。
「今日、商品のパンに使うはずたった苺だけど、結さん、食べてね。」
そこへ妹の恵が、私たちの部屋に飛び込んで来た。
「旦那のスマホを借りて来た!これで、東郷製作所に電話して、昨夜のことと今後の対策を相談しましょう。」
「そうね。パン焼きの道具を取り戻さないとお店も再開できないし。でも、家宅捜索が入ったお店に、またお客様が来てくださるかしら…。」
父の葬儀にも動じなかった、気丈な母が力なく言った。
「恵さん、その電話、貸してください。僕の両親に電話させてください。」
「結さん?」
「僕の両親は弁護士です。皆様のお役に立てると思います。」
「結さん、ご恩を忘れません、本当にありがとう。」母が言った。
「そんな、僕たち家族ですから。両親とも、もう出勤していると思うので、事務所にかけてみます。」結が言った。
結は、白い指で、スマホのボタンをひとつひとつを押した。
「はい、道ノ瀬弁護士事務所です。」
「道ノ瀬の息子の結です。父か母か、どちらかお願いします。」
「少々お待ち下さいませ。」コール音の後に出たのは、事務職員のようだった。
「もしもし、結なの?」
「お母さん?!」
「結?結が帰国するからとパリから電話をくれてその後音信普通になっているから心配してたのよ。今どこ?」
「東郷さんの家!」
「助けて、お母さん!大変なんだ!東郷さんち、家宅捜索でいろいろなものを押収されたんだ!」
「え?いつのこと?」
「昨夜だよ、東郷さんのお父さんの会社のことで。でもこの捜索絶対おかしいんだ!」
結がそう言うと、結のお母さんが電話口の向こうで男性と話す声が聞こえた。
「結、今日仕事が終わったら、お父さんと東郷さんのお宅にお伺いしても良いかしら。」
結のお母さんの声が、電話口から聞こえている。
電話を、私が替わろうとしたら、とっさに私の母が替わった。
「東郷悟の母です。初めまして。息子がご子息様の結さまに大変お世話になり感謝しております。」
「監督のお母様?、私共で何かお役に立てればと思いますのでご住所をお教えください。」
「感謝いたします、道ノ瀬さん。」
弁護士である結の両親が来てくれることを、母と妹たちは神にもすがる気持ちで喜んでいる。
しかし、事態はそう簡単ではない。
母と妹たちは、検察官たちが散らかした物をひとつひとつ拾い、片付け始めた。
結の両親が私の実家に来る。
結が政府アンバサダーを依頼されていること、私が結と別れないため、父が死に追いやられ、会社が潰されそうになっていること、すべてを話す時が来る。
私と結は、国家権力を敵に回している。
それがどれほど危険なことか。
法律の専門家である、結の両親は何と仰るだろうか?私の母や妹は?
これは、天罰か…。
結との愛を貫くのはそれほど、人の道に反しているのか。
突然家宅捜索を受け、結も私も、財布、スマートフォン、パソコンなど貴重品を含むバッグを取り上げられた。スマホには帰りの電子航空券が入っている。
これほどまでに屈辱的行為を受けたのは、初めてだ。
尊厳すらも、むしり取られた気がする。
結も私も、フランスとドイツへどうやって帰ればいいのだ?
結の舞台や私の試合はこの先どうなる? 観客や、パリバレエ団とブラオミュンヘンにこの状況を、どう弁明すればいいのだ?
過酷すぎる状況にめまいがする。
その時、結が、私の目の前に赤いものを差し出した。
「結・・・?」
「苺食べようよ。お母さんにもらった苺、美味しそうだよ。あーん、して。」
結が、私の口元に苺を差し出した。
今この時に?と躊躇したが、結はなおも差し出そうとする。
私は、苺にかぶりついた。
甘酸っぱい、香りが口いっぱいにひろがる。
昨夜からの、ひどい緊張とは裏腹な甘さにほんの少し癒された。
「僕にも…。」結が言った。
結の望みをかなえてやるため、私は苺を指で摘まんだが、一瞬考え、ヘタを自分の唇でくわえた。
わずかにあごを上げ、結を誘った。
結が私に近づき、苺にかじりついた。
結が嬉しそうに半分食べ、もう半分口に入れると、唇が触れた。
「結・・・。」
そのまま、唇を合わせ、キスをした。
結が、苺を噛み、呑み込むと再び口づけをした。
そのまま、結を大きなソファに寝かせると結が素直に従う。
「家宅捜索なんかが、あった後だけど…。」私が言うと、
「夜には、うちの両親が来るよ。その前に東郷さんが・・・欲しい・・・。」
危機感真っ只中にあって、私たちは互いを求めた。
もしかすると、廊下につながるドアが母か妹に開けられるかもしれない。いや、これで私たちも終わりかもしれない危機感が、余計結を求めさせる。
結の黒のパーカーをまくり上げた。
ベージュのスリムストレートのボトムスを脱がすと、ダンサーらしい筋張った長い脚が現れた。
アンダーショーツを脱がし、片足にかけたまま、ソファの背もたれに載せる。
「あっいや、この格好…。」
私が結の腰の下に、クッションを挟んだからだ。
朝で明るいし、全てを見られてしまう格好を、結は恥じらった。
両足でそこを隠そうとする。
私は再び、結の片足をソファの背もたれに載せ、もう片方の足の膝裏を掴むとグイと押し上げ、外側に向けて開いた。
「いやっ!」
「私が欲しいんだろう?欲しい所を見せて。」
「ひどいっ、こんなことして!」そう言いつつ、結は体の力を抜いた。私を許してくれている。
私は、服を脱いで、結に重なった。
背中から回した手で結の尻を掴み、私の体に密着させ、唇を合わせた。
何度も何度も、浅く深くキスをする。
今結と、体を合わせたからとて、事態が好転するわけもない。
ただ、ふたりして事態の深刻さにうなだれていてもしょうがない。
「結、結!結…。」
問題は解決しないけれども、結は、私を元気づけるために、自分自身を与えてくれたのだ。
私は結の白い肌にわが身を沈めた。
結の、肌に口づけ、吸い上げて行くと、結が身もだえるように声をあげた。
締まった蕾にキスをすると、とっさに逃げた。
「可愛い、結…。」
開かれると分かっていながらも、慣れないのだ。
結は、いつも初めてのようで、いつまでもうぶなままだ。愛くるしい私の天使…。
私は指を舌で濡らした。
仰向けに寝かせた結に中に、私は手のひらを上にした状態で、人差し指と中指をまっすぐそろえた状態で挿入した。
「あっ!いやっ!」
かまわず、根元まで挿入する。指の関節を恥骨方向に折り曲げる指の腹を中の壁に触れさせ、優しく愛撫した。 結の締まりが更に良くなる。
「いや、いや、動かさないで。」
「”ここ”の、力を抜いて…。」
「あっああん。」
結の前を掴み愛撫を加えながら、中の形を更に探る。
そうだ、結は、前側に向かってゆるやかにカーブしている。
「うっううう・・・。」
指を軽く動かし、結の良い所を、軽く撫でてやると結が恥ずかしさで緊張していたのから感じ始めたのが分かった。
一定のリズムで、結の前と中を刺激してやる。
結の様子を見ながら、中からゆっくりと優しく8の字を書くように触れてやる。
グッと押すように、指を押し付けると、
「あっ、東郷さん…。」
結は、甘い声をあげた。
指を引き抜き、蕾を両手指をかけて押し広げた。
舌を差し込む。
「うあっああっ!」
蕾の中を濡らし、入口を濡らし、舌を引き抜くと己のものを押し当てた。
「入れるよ、結…。」
「うあっあああああ!あっ!あっ!あっ!」
結の内壁と自分が密着して、擦れ合い、濡れた音を立てた。
「あっあふ…。」
結を抱き起して、背中を抱き、結の足を私の腰に絡みつかせた。
抽挿を繰り返し、一段と奥深くに突きこむと結の背中がグンッとしなり、結の方が先に行った。
「ああっ!!」
続いて、鼓動のリズムにも似た振動で、私が結の中に愛情を注いで行く…。
結の上に、倒れ込み互いに動きを止めた。
熱かった互いの熱が、穏やかになり、私がわずかに動くと、
結が私の背を、髪をゆっくり撫で始めた。
ゆっくり、ゆっくりと…。
こんな状況にはなったが、分かったことがある。
私はこれまで、サッカー監督になって得た、地位や名誉を守り、観客の声援に答えることに必死だった。
結は、どんな過酷な状況でも、寄り添い私を元気づけようとしてくれる。
サッカーファンだった結は、私が著名な監督であったからこそ、愛してくれたのではないかと思っていた。
しかし、それは違った。
このどん底にあってなお、結は私と一緒にいてくれる。闇の底に落ちた私を照らしてくれる。
月のように儚げな君は、それでいて私を一筋の光のように照らしてくれる。
道を見失わないように、私が道を誤らないようにと。
これからは、
ただ一人の人間として、結を愛して行く。
そう、ただの男として。
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