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大切なものが思い出せない。??ht
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大切なもの──
俺にはあったのだろうか。
なにも、思い出せない。
どうしたら思い出せるのだろうか。
なぜか、思い出したくない。
灰色の空を眺める。
マスクを外し、大気を吸い込む。黒い空気が、肺に入っていく。俺はぶはっとむせた。マスクをつけ直す。
ht「あともう少しで地球は死ぬか」
死骸をこつんと蹴る毎日。生にしがみつく毎日。なにかを思い出そうとする毎日。
思い出せない。そう、思い出せないのだ。
??「綺麗だ」
そんな声が、耳に残っている。
俺は、歩き歩いて──灰色のコンクリートの、ある巨大な建物にたどり着いた。
死骸がまた転がっている。
キィ…
重い扉を開ける。
「ひとらんさん?」「生きていたんですか!?」
その言葉で、初めて気づく。俺は前まで、ここに住んでいた。みんなの顔に、見覚えがある。
「でも…」「遅かった…」
でも、なにか…足りない。なにかがおかしい。
大切なものが思い出せない。
「───」
俺は、その言葉を聞いて唖然とした。
俺の愛した彼は──
死んでしまっていた。
ああ、この人の為に俺は生きていたんだ。俺はこの人にもう一度会うために生きていたんだ。
全て無意味だった。
ht「必ず…2年後くらいには」
そう俺は言った。
彼は死んだ。雪の中で死んだ。生きているのが辛くて死んだ。
俺のせいで死んだ。
??「これから、よろしく」
??「なぁ」
??「好きだよ」
??「必ず──」
帰ってこい。そんな言葉を俺にかけた。
俺はポロポロと涙を流した。
愛してしまったことに。愛されてしまったことに。
出会ってしまったことに。
全てに重みを感じた。
??「ひとらんって、雪みたいや」
ht「…え?」
??「白いし…可愛いし?」
ht「…なんだよそれ(笑)」
俺は俺に溶けていく。
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