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愛の喜び utem
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鬱先生視点
耳に心地よいメロディが流れてくる。そのメロディで、俺は目を覚ました。
ut「…ん」
辺りを見回す。隣には綺麗に畳まれた布団が置いてあるだけで、彼の姿はない。
♪〜
ピアノの音が、隣の部屋から漏れだしている。
俺は、ゆっくりと隣の部屋に近づいた。
em「あ、大先生…!起こしてしまいましたか?」
ut「ん?いや、別に」
そうですかと言い、またエーミールはその綺麗な指先を、なめらかに滑らせていった。
綺麗やな…
ふと、俺はそう思う。
em「どうしたんですか、そんなに見つめて」
ut「ん?綺麗やなって思っただけやで?」
em「なっ…」
彼は耳まで真っ赤に染まった。
エーミールは綺麗だ。普通は恋人にかわいいだとか言うんだろうけど、俺は断言する。エーミールは、『かわいい』よりも、『綺麗』だ。
まぁかわいいでも否定はしないんだけど。
em「いきなりそういうこと言わないでください」
ut「ん?…んー…」
エーミールがまた、メロディを紡ぎ始める。俺はそれをずっと眺めていた。
ut「なんていう曲?」
em「…フリッツ・クライスラーの『愛の悲しみ』って曲です」
ut「ふーん…」
クラシックな音楽とは不釣り合いな部屋だが、エーミールがいるというだけでこんなにこの時間が幸せに感じるなんて。
em「ふぅ…」
エーミールの演奏が終わる。
em「どうでした…?」
彼がこちらを振り向いた瞬間、俺はエーミールに軽く、口付けをしてやった。
em「…なっ…!」
ut「…ん」
彼はまた、顔を赤らめた。
em「なんでいきなりっ…」
ut「…すまん」
エーミールは綺麗だ。だから、俺はエーミールを汚したくはなかった。キスをとっておいたのもこの理由からだ。
だが今この瞬間、ファーストキスを奪ってしまった。
ut「あー…もー、なんか今日ダメだわ。俺」
寝るわと吐き捨てて、俺は元の部屋に戻った。
em「…」
エーミール視点
em「…」
私の演奏した曲を聞き、彼はまた寝てしまった。
em「…分かってますよ」
彼が私に手を出さないこと。ファーストキスもしたこと無かったこと。
それは、彼が私を『綺麗だ』と思っているから。
em「大先生…」
私は別に汚れてもいい。
だけど、貴方が望むなら。貴方が私を汚したくないのであれば。
私はただ、それに従おう。
それが愛というのなら。
──愛ゆえに。
em「フリッツ・クライスラー…『愛の喜び』」
私はまた、ピアノの上に指を這わせた。
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