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また明日
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「えー、今日からこの1年B組の担任になった、小鳥遊誠(たかなし まこと)だ。よろしくな〜!」
え、これが担任?小鳥遊先生?
なんか明るすぎない…?
ちょっと僕もう挫折しそう…。
どうせならもっと可愛げのある女の先生が良かったなぁ。
まぁ、別にいいか。今更どうすることも出来ないしね。
小鳥遊、かあ。『たかなし』って読むんだっけ?
なんで『たかなし』なんだろ…。
ことりあそびで良くないか…?
良くはないか…。
まぁ、良いや。佐々木君とも喋れたし、なんか眠くなってきたな…。
なんてったって窓側だからポカポカして暖かいんだよなぁ。
まぁ、僕学校では寝れないんだけどね。
眠れない…体質?みたいな…そんな感じ。
ふと横を見れば先程弾けんばかりの笑顔を見せていた佐々木君が今度は幼い子供のようにすやすやと寝息を立てている。
佐々木君、…寝てる…。
今なら僕も寝れるかもしれない。
意識が遠のいてゆく。すーっと落ちるような感覚に身を委ね、そのまま僕は意識を手放した。
ーン…コー…ン
なんか聞こえる…。
カー…ン…コーン…キー……
大きい音…、それと人の声…。
キーンコーンカーンコーン
「おーし、じゃあ今日はこれにて解散!皆気をつけて帰れよー」
大きな音を立てて先生が教室をでていく。
っ?!
ガバッと跳ね起き、状況を確認する。
あ、僕…寝ちゃったんだ…。
いつもは絶対寝ないのに…。
クラスメイトの人達は帰る支度をしている。
賑やかだ。
佐々木君は……まだ寝てる。
起こしたほうがいいのかな…。
考えに考えた挙句、起こしてあげることにした。
「さ、佐々木、君…。お、おきて…。」
これで起きなかったらどうしようと内心焦ってはいたが意外にもすんなりと起きてくれた。
「ん…?あぁ、もう帰る時間か…。ふあぁ、あー、眠…。池田、だっけ?起こしてくれてあんがとな!」
大きなあくびをし、伸びをすれば、再びあの笑顔でお礼を伝えてきた。
起こしただけ、なんだけどな…。
ぼんやり考えていると、佐々木君はいそいそと帰る支度を始めた。
「俺今日、見たいテレビあるんだよね。間に合うかなー、ダッシュで帰るか。」
独り言のように呟いている。
これは僕に向かって言ってるのかな…。
なんて返事をすればいいか分からない。
そう思って俯いていると、佐々木君の視線を感じた。
佐々木君の方を見るとやはりこちらを見ていた。
えっ、…なんで見てるんだろう…。
あ、今僕が何も返事を返さなかったから…?
だとしたらここで何か話すべきなのでは…
なにか、なにかないのか…。
色々考えるがこれといった返事は思いつかなかった。
そんな僕を見て呆れたのだろうか。
佐々木君は視線を自身の鞄に戻し、荷物を雑に詰め込んでいく。
呆れられた……。
僕が何も言わないからだ…。
せっかく喋れたのに…。自己紹介も、…頑張ったんだけどな……。
「池田。」
佐々木君が僕の名前を呼ぶ。
「な、何…??」
『また明日な!!!』
そう言った後佐々木君は直ぐに教室を飛び出していった。
へ?
また明日…?
佐々木君が、僕にそう言ったのか?
嬉しい。
だってそんな言葉、今まで生きてきた中で言われたのは初めてだったから。
嬉しくて、なんだかそわそわする。
「また、明日…。」
僕はひとりきりになった教室でぽつりと呟いた。
呟いた口は緩んでおり、自然と笑顔になってしまう。
こんな嬉しい気持ちがあったんだ。
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