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帰宅
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死んだ
そう思っていた、その時
僕の手が掴まれ、引っ張り上げられた。
「うわっ…?!」
「走って!!!」
誰かもわからないその人物に腕をひかれながら、精一杯、言われるがままに走った。
この際、誰かなんて関係ない。
奴から逃げられるのならそれでいい。
どれくらい走ったか、わからなかった。
後ろを向いても奴はいなかった。
諦めたのだろうか。
こんなに全力で走ったのはいつぶりだろうか。
ぜえぜえと、息が整わない。
深呼吸を繰り返し、やっとのことで息を整えるとまだ手が握られていることに気づいた。
そういえばこれ、誰………
上を見上げると、それは佐々木だった。
「え??!佐々木…君?!!」
驚いて叫ぶと、佐々木が笑った。
「ははははっ!そんな驚くなよ、」
「ご、ごめん、」
「謝んなくてもいいのに」
事情を聞くと、どうやら学校に忘れ物をしたらしく、戻ってくると僕が体育館裏に引きずり込まれるのを見たのだという。
「でも、よかった!池田が無事で!」
佐々木がニカッと笑う。
自然と僕も口角が上がる。
兎に角、僕…生きててよかった…。
帰る方面が一緒だったので、この日は駅まで並んで歩き、それぞれの駅で降りた。
奴が一体何だったのか、結局わからなかったけど、佐々木が助けてくれてよかった。
明日また奴に出会ったらどうしよう。
と、不安になったが、佐々木と帰ったことの方が自分の中では大きすぎて奴のことなんかすぐに忘れてしまっていた。
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