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Episode 53
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何かに呼ばれるようにして、浅葱は目を覚ました。立つ場所は鴇の病室。
ああ夢なのかと、納得する。
白に包まれ、鴇が死んだように眠っていた。
何も変わらない。変わらないことに安堵し、変えられないことに心が焦げつく。
愛され、幸せだった過去の自分を妬み嫉むことをやめられない。
願うならば、あの幸福の日々に閉じ込められたいと。
「目覚めて、お願い」
終わらない日々に閉じ込められるのはもう苦しい。真に愛されたい人に愛されないのはもう辛い。
懇願する。
誰よりもよく分かっているのだ、延命治療をやめれば、楽になるということなど。
柊が何かを言おうとする度、言い淀んでいることを知っている。
柊はどこまでも浅葱を愛し、どこまでも想っていた。
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