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ぼっちの登校
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「叔父さんっ!」
白を基調とした病室
若菜に叔父さんと呼ばれたその人物は、点滴をされた状態でベッドへと横たわっていた。
無意識に、手に力が入る。
けれど、若菜の切羽詰まったような様子とは裏腹に
若菜の叔父さんは、あっけらかんと笑ってみせた。
「おぉ、律。また、来たのか。」
「来るに決まってるじゃん!僕が連絡聞いて、どれだけ………っ!」
「悪かったって。今日は、調子がいいと思ってたんだけど。どうしてもな。」
若菜を慰めるように若菜の叔父さんは頭を撫でた。すると、俺に気づいたのか、一瞬、驚いたような表情をした後、手をこまねくように俺を呼び寄せる。
「律の友達か?」
「………ぇ。ぁ、いや。俺は、」
「友達だよ。音くんって言うんだ。」
〝ともだち〟?
アレ、友達って何だっけ。
確かなんか友達って、一緒に昼飯とか食べたり、くだらない話したり、授業サボったりする…………アレ、か?
いやいやいや。
違う違う。
若菜は違うこと言ってるんだよ。
まさか、友達なんて言うわけ…………。
「名前は、音くんって言って。ギターの弦を直してくれて僕の、友達!」
やっぱり、友達って言ってる?
「音くん?どうかしたの。」
「ぁ、。いや、久々に聞いた言葉にびっくりしただけ。」
「?」
「いや、何でもない。気にすんな、マジで。俺の言葉の8割は意味ないと思っていい。」
「え、わ、分かった!」
俺と若菜のその様子を見ていた若菜の叔父さんが、俺と若菜を見て肩を震わせて笑い出した。
「ぷはっ。何だ、お前ら全然、噛み合ってないな。ははっ!」
「そんなことないよ!ね、音くんっ!!だって!音くん運命感じるとか言ってたし。ね!」
「運命?」
若菜と若菜の叔父さんが俺へと視線を向けてきて、緊張するやら自分の言った言葉を再度、聞かされるとイタイ言葉だったと気付かされるやらで顔を覆いながら答える。
「やめて、お願いします。あれは、その場の何か空気というか、本当やめて。」
「ぇ、や、僕、感動したよ!運命とか何かカッコいいし!」
「本当に、やめ」
悪気のない若菜の言葉にメンタルをズタボロにしていくのを感じて、ついに蹲った瞬間、ふと視界に入ってきた白い楽譜に身体が真っ先に反応する。
「あ。そうだ。律。売店でいつものやつ買ってきてくれよ。」
「分かった!音くん、すぐに戻ってくるからね。」
小銭の音だろうかチャリンと音を立てて
若菜が病室から出て行く足音が響く。
「具合悪いのか?」
「いえ、大丈夫、です。音楽………やってるんですね。」
大きく深呼吸をして立ち上がりながら告げる。
「まぁ、暫く、弾けてないけどな。君も、音楽やってるだろ。」
「いや、俺は______。」
〝音楽は、やったこともない〟
今まで何度となくするりと出てきた言葉がうまく音にならない。
喉に言葉が張り付く。
だって、多分、俺の目の前にいる人は
音楽を続けたいのにそれが叶わない人だから。
若菜の叔父さんの痩せ細った手首を見てしまえば
否応なしに理解できた。
「俺は______もう、」
目の前の人には嘘はつけない。
それは、心苦しい。
「音楽は____________やめました。」
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