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「だって…君だけだったんだ」
高取にしがみついたままの岡本の口が動
く。
高取が聞きたいようで聞きたくない言葉。
知ってしまったらもう認めてしまうしか
ないような気がして、とっさにその口を塞
いでしまおうかという誘惑に襲われる。
結局は間に合わなかったけれども。
「君だけがちゃんと僕を見てくれた。
優等生でも、苛められっ子でもなくて、
ちゃんと僕自身を」
「…頭沸いてんのか」
「違うよっ。
ホントに、嬉しかったんだ。
君が僕を見てくれることが。
僕は口下手だし、誰も声をかけてくれな
かった。
でも君が僕を構ってくれて…それが嬉し
かったんだ」
高取は岡本の中の随分と屈折した記憶を
披露されて激しい頭痛を覚えた。
岡本は確かに存在感が薄いし、口数も少
ない。
だがそれはいつも俯いて1人でいる彼が
話しかけにくい空気の壁を作っているから
であり、4月早々にカラオケに誘ったとい
うクラスメイトが肩を落としていたことも
きっと知らないんだろう。
常に俯いているからあまり知られていな
いかもしれないが、顔のパーツは整ってい
る。
そもそもノンケであろう悪友たちがブ男
相手に勃つとでも思っているのか。
「……」
そこまで考えて、高取はそれ以上考える
のをやめた。
どうやら本当に観念しなければいけない
らしい。
岡本の言うことはきっと彼が思うよりは
少しだけ事実を言っている…のかもしれな
い。
「でも君が構ってくれたら構ってくれるだ
けどんどん気持ちが我儘になっていって。
君に名前を呼んでほしくて、君に触れて
ほしくて、たまらない…。
気持ち悪くて、ごめんなさい…」
言葉の最後は尻すぼみになって、名残惜
しそうにもう一度しがみつく腕に力を込め
ると、岡本はゆっくりと腕を解いた。
「君が望んでくれるなら、僕は君の言うと
おりにする。
でも本当は他の人なんて嫌だ。
君が望んでくれるから我慢できるけど、
そうじゃなきゃ嫌だよ。
本当は高取君に触れてほしい。
だから他の人が飼い主なんて嫌だ。
もしどうしてもって言うなら…君が僕の
飼い主になってよ」
日頃は難なく空気に溶け込めるくらい無
口なのに一度喋り出したら止まらない性格
なのか、岡本は一気に胸の内をぶちまけた。
今まで黙って我慢していたことも、それ
は喜んでいたからではなく高取が望んだか
らだと目を見ながらハッキリ言いきった。
高取としてもここまで岡本が言うとは思
わず、もはや耳を塞いで聞こえなかったフ
リでもしてしまいたい。
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