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◆
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そこへ高取の携帯の着信音が鳴り響いた。
先ほどヒデに肩を貸して出ていった九条
だ。
《高取、大丈夫だったか?
こっちはなんとか見つかる前に校舎出ら
れたけどさ》
「問題ない。
岡本が動けなかっただけだ」
《あぁ、岡本か。よかった…。
てっきり誰かに捕まったのかと思った》
「バーカ。そんなヘマするかよ」
焦っていた声色があからさまにホッとす
るのを察した彼は見くびるなと釘を刺す。
九条は苦笑いでそれを流すと、岡本の名
で思い出したように話を変えた。
《それより岡本は大丈夫か?
なんかあからさまにヤバイ感じだったけ
ど》
「本人は元気だ。
ただどうも歩くのがな」
《あー、やっぱりな。
今アニキいるからさ、車出してもらうわ。
校門のところで待ってて》
「あぁ」
九条の兄本人とも高取は顔見知りだ。
同じ道場で一戦交えたこともあり、多く
の説明を求められないであろうことは彼に
とっては有り難かった。
通話を終了してしばらく待っていると、
ようやくよろよろと岡本が個室から出てく
る。
とりあえず危ない状況は切り抜けたよう
だが、やはり改めて見ると顔色は悪いまま
だ。
岡本が汚れた手を洗い終わるのを待って、
高取は背中を向けた。
「乗れ」
「え?あの…」
「ちんたら歩くのを待ってられるか。
さっさとしろ」
「う、うん…」
しゃがんだ高取の背中に恐る恐る手を伸
ばしてそっと体重を預ける。
岡本を抱えたまま高取が立ち上がると、
いつも彼が見ている高さまで視界が広がっ
た。
触れ合う肌から高鳴る鼓動が知られてし
まわないか不安になりながらも、堂々と彼
に抱き着いていられるこの時間は岡本が夢
にも思わなかった至福の時間だった。
「おい、あんまりくっつくな」
「…ごめんなさい」
謝りながらも触れ合う肌の面積は一向に
変わらず、もう文句を言うのも面倒になっ
た高取は二人分の鞄を抱えてそのまま歩き
出した。
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