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偽り2=SIDE S=
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俺を見上げる目は、脅されているようなものではなく、むしろ隙があればこちらが食われてしまうような鋭さを秘めている。
「どういうことです?まあ、金品を請求されても困りますけど」
面倒そうな表情を浮かべ、メガネの奥の瞳は普通の優等生には見えないチグハグさがある。
俺には確信がもてる。
こいつの外面は偽物だ。
多分アニキと話していた時に見せた表情とかが素なのだろう。
優等生を演じているのはこの学校でだけだろうけど、息がつまらないのだろうか。
「つーか、髪の色ごときで毎朝しつこく検査されるのもしんどいんだよ。オマエが俺のツレになれば、検査する必要ねえだろ」
言った瞬間にふうっと大きく溜息をつかれる。
「どういう理屈ですか、僕に目こぼししろと?僕は別に兄のことも隠すつもりもないですし。中学の時はみんな知ってましたしね」
たかだか、高校の風紀だろう。
学校で暴れるわけでもないので、先生たちもとりたてて俺の格好を取り上げない。
大切なのは、進学率だ。
ここに来ている奴らもみんなそうだ。
なのに、なんで目くじらたててこいつは俺に構うんだろう。
ふと疑問がわく。
「オマエさあ、そんなにマジに風紀やってて楽しい?」
「任されたことは、キッチリやらないと気が済まないので。でも、校則破っているのは瀬嵐先輩しかいませんけど」
そりゃそうだろうけどね。
毎日絡まれる身にもなれと言いたい。
「でも、高校3年間平穏に過ごしていきたくて、この高校選んだんじゃねえの。ツレになっとけばいいんじゃねえ?」
一瞬目を瞠ると、頭ひとつ低い身長の後輩は俺の顔を馬鹿にした表情で見あげた。
「あなたに周りをうろつかれたら一緒ですよ。兄のことは、不良たちには有名ですけど、この学校の生徒は知りません。あなたは逆です。」
迷惑だと言外にはっきりお断りされて、俺は何故かガックリする。
そんなに、ツレが欲しかったのかな。
俺は。
「確かにな」
思わず沈んだまま、髪の毛をかきあげて掌で目元を覆う。
指先の隙間から見える長谷川の表情が一瞬緩んだように思えた。
「納得してどうするんですか。僕を脅したいんじゃないの。あなたは」
呆れたような表情を浮かべて俺を覗き込む目からは鋭さが消えている。
「そうなんだけど、どーしたらオマエを脅せるのかわっかんねえし。別に脅したいわけでもねーし」
どうしたいかなんて、全くもってわからない。
この高校にきてから、誰にも構われたことがなかった。
たまたま、風紀で注意してただけなのかもしれないが、俺は確かに嬉しいと感じていたのかもしれない。
「一体何がしたいんです」
声が今まで聞いた中で1番優しく聞こえた。
「だから、自分でもわからないっての」
思わず声を荒げた俺に、長谷川は薄い口元を緩めて笑った。
「仕方ないですね。そんなにお友達が欲しいなら、脅しじゃなくてなってあげますよ。」
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