アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
年上の人2=SIDE H=
-
友達とやらになると言った瞬間、驚いたように覗いた先輩の表情が呆気にとられた隙だらけのようで、カラコンが外れるんじゃないかってくらい大きく目を見開いていた。
この高校でその格好をしていたら、友達なんかできないのは当たり前なのに。
ソレを選択しておいて、友達が欲しいだなんて天邪鬼にもほどがあるだろう。
「脅しじゃなく……って」
言葉を確かめるように、オレを見つめる様子が小動物のようにも見える。
この眼鏡は伊達なのだが、見たままのものを映さなくなっているのかもしれない。
「脅されるのは、僕は好きじゃないですから。自分の意思であなたのお友達になるって言ってるんですよ。大体、友達って脅してなってもらっても嬉しくないでしょう」
体つきのいい男が、オレを困惑したように見おろす様子が少し優越感をくすぐる。
そりゃそうだけどとか、でも、だとかぼそぼそ言いながら戸惑っているさまが面白い。
自分からツレになろうと言い出した癖にだ。
オレが断ることは折り込み済みだというならば、その予想に反してやりたくなる。
天邪鬼はオレの方もだ。
「オマエ、俺に周りをうろつかれたくねえって……」
金髪を掻きながら、しどろもどろになる様子は見ていて可愛らしいとも思える。
うちのアニキもこんな感じだよな。
「僕は、7時45分から検査をしてます。校門が開くのが7時20分です」
唐突にスケジュールを突きつけると、理解できないという表情をする。
頭の回転はあまり良いとはいえない。
努力してこの高校に通ったのだろう。
それだけにドロップアウトしたことは、実力がないと認められず自分が許せないタイプなのだろう。
「……え……」
「僕は職務を放棄するつもりはありませんよ。だけど、友達のよしみで教えてあげます。開門してから25分以内に登校してください」
肩を落とす相手の視線の揺らぎに、寂しさのかけらが映る。
構って欲しいのに、先生からも周りからも無視をされ続けていたのだ。
本当に、心の弱い人だ。
「俺、朝よええ…」
検査を避けるでもなく、いつもつかまるこの人は、きっとオレに構ってもらいたかったのだろう。
困った人だと思うが、前ほど不快感はない。
勉強ができる環境と、頑張れば未来を約束されるチャンスがある人が、無駄にしているのを見て、非常に不快で仕方がなかったけども、実際に話をしてみて弱い人なのだと思えば手を差し伸べたくなる。
「そこまで知りませんよ。本当はその金髪、綺麗に手入れしてて僕は好きですよ。兄のは自分でやってるんだか、ばっさばっさなんで」
ちょっとはにかんだ様子で、そうかと言って自分の髪を撫でる様子は素直で可愛いらしいなとも思う。
「……だけど、風紀だから見つけたら取り締まる、と」
「そうです。だから、僕に見つからないように登校してください。そうしたら、お昼は、一緒に屋上で食べてもいいですよ。」
朝あわなかったらいつ会う機会があるのかと、考えさせる時間もおかずオレは言葉を重ねた。
朝、オレの検査を受けて声をかけられたいというキモチでいるならば、早くくるわけはないのだから。
「昼飯?一緒に食べるのか」
意外そうな顔をしてオレを見下ろす様子に、手にしていた自分の弁当を翳して、
「お友達とは食べるでしょう。どうですか」
中学時代は給食だったが、高校になって弁当を誰とも一緒に食べたことはない。
それは別に苦痛にもならないことだったけど。
オレは壁が出来る前に、周囲に鉄壁を張り巡らせてしまっている。
「屋上…な。わかった」
ちょっと嬉しそうな笑みを隠すように口元を手で覆い、瀬嵐先輩は頷いてどこか落ち着かない足取りでじゃあなと言って、校舎へと向かっていった。
春の日差しに溶け込むような金色の髪が、青空に溶け込んで見えた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
4 / 46