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家庭教師=SIDE S=
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長谷川に勉強を教わるようになって、俺の成績は嘘のようにメキメキと上昇した。
この間の期末には100位以内に入れた。
長谷川は要点を分かりやすく説明し、しかも、解答方法の裏技まで披露してくれる。
塾の講師なんかとは比べ物にならないくらいの分かりやすさである。
その上、俺に教えながらもずっと首席をキープし続けているのだ。
最初は、後輩に教わるなんて最大の恥とも思っていたが、今は本気でそっちに関しては尊敬している。
どうしてそこまで俺にしてくれるのか謎ではあるが、長谷川に裏表はないので安心している。
ペンを持つ綺麗な指先も、眼鏡の奥の眼差しも、最初に出会った頃のようなとげもなにもない。
「何考えてるんです?分からない?」
問いかけてノートを覗き込もうと近づく顔になんだかどきどきする。
ちょっと前から感じている。
俺はこの綺麗な顔の表情の動きのひとつひとつに一喜一憂してしまう。
このキモチの正体に。
「いや……。夏休みだってのに、毎日きてくれるのなって思って」
「夏休みが巻き返しのチャンスですし、それに先輩の部屋、涼しい」
薄い唇でちょっと笑うのが、このごろ可愛いなと思い始めている。
友情じゃない感情がどこかにあるのが分かる。
分かるが、男同士だ。ありえない。
「オマエの部屋、冷房ないのか」
「扇風機はありますよ。勉強はもっぱら図書館でしかしないので、気になりませんが」
いまどき扇風機しかないって、そんな家あるのか。
普通に40度くらいになるぞ。最近。
勉強に必要なものがまったくそろってない。
オヤジさんがヤクザで、アニキが極悪不良で、おふくろさんがクラブのママって環境自体もひどいのに、どうしてこんなにストイックにやってられるのだろう。
「ふうん。そういや、オマエ、カノジョとかいねえの?」
俺には中学からの彼女はいたが、こんな格好を始めてすぐに振られた。
真面目な俺が好きだったのにといわれて、中身は変わってねえのに人は見た目だけなんだなと思った。
「いるように思えます?誰とも付き合ったことはないですよ」
何を当たり前のことを聞くんだとばかりに、不愉快そうに俺の顔を見やる。
どこかで、俺は喜んでいた。
思わず顔がにやけそうになる。
気づいたことがある。
ありえないけど、ありえないんだが、俺はこの生意気な後輩が好きらしい。
だったら言うことはひとつだ。
「……なあ……TOP10位に入ったら、俺と付き合え」
ノートの上で動いていた、長谷川の手が動きをとめて、俺の顔を凝視する。
そして、俺の顔を馬鹿にした表情で見返す。
「………僕、男ですよ。ありえません」
思い切って告げた言葉も、あっさり簡単に振られた。
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