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家庭教師=SIDE H=
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「そうか……じゃあもういいや。……勉強教えなくていい」
突然付き合えといってきた先輩は、オレが断ると黙り込んでノートの上にペンを置いて静かに言った。
男同士で、付き合うとか何を考えているかまったく分からない。
本当に何を考えているんだ、この先輩は。
僕は苛立って、先輩の顔を覗き込んで睨みつける。
「何を言ってるんです。もう少し頑張れば、TOP10も狙えるんですよ。ここで諦めるんですか」
この期に及んで、何を言い出すんだろう。
付き合えって?恋愛として?
そうじゃなきゃ勉強やめるって?
バカな話だ。
冗談にもほどがある。
僕はどう見たってオンナには見れないし、先輩だってそうである。
カノジョいないからってからかっているのだろうか。
「今、俺、オマエに告白して振られたんだぞ。何でそんな平然としてるんだ」
俺の剣幕に、逆に信じられないといった表情を浮かべる先輩の気持ちがわからなかった。
あと少しで目標が見えてきたのに、こんな簡単に投げ出そうとする様子に腹がたって仕方がなかった。
「そんな冗談みたいなこと、僕は気にしませんよ」
吐き捨てるようなオレの言葉に、先輩の目が大きく開かれた。
冗談でしかない。
たとえば本気だとしても、気の迷いだ。
誰にも構ってもらえず寂しいキモチになっていたところに、オレが現れて先輩は勘違いをおこしているだけだ。
「……冗談じゃねえ……冗談じゃねえよ。俺はオマエが好きだ。冗談とか言うな」
ぐっと握り締めたこぶしがわなわなと震えている。
怒っている。
好きだといわれて純粋に嬉しいとは思う。
派手で綺麗なイケメンが、何か勘違いをしてオレに好きだといっているのだ。
でも、オレは男だし、先輩の期待にはこたえられない。
だから、気の迷いを覚まさせてあげなきゃいけない。
「先輩。気の迷いですよ。僕は男で、先輩も男です。生物学上何も生み出せません。寂しいきもちが勘違いをしてるだけです。きっと、綺麗な彼女みつかりますよ」
諭すように言うが、先輩はオレを本当に絶望したような表情で見つめて首を横に振った。
「もういい…帰れ」
搾り出すような声で告げる様子に、オレはいつもの周りのやつらが作る壁ににたようなものを感じて、思わず手を伸ばした。
ガンと大きな音をたてて、先輩は机の上に拳を振り下ろした。
「触るな……勘違いするだろ…ははっ」
金色の髪に手が届こうとした瞬間拒絶を受けて、オレは息を呑んだ。
ショックだった。
拒絶なんて慣れているのに。
オレは伸ばした指をぎゅっと握りこんだ。
なんで、こんなにショックなのだろう……。
「わかりました。今日は帰ります。」
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