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アニキ=SIDE H=
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荒れた様子の先輩を置いて、もやもやしたキモチを抱えながら自宅に帰り着く。
オレは何かを間違ったのだろうか。
いや、でも男同士で付き合って何が生まれるっていうのだろう。
部屋にたどり着くと、アニキが床に転がって寝ていた。
この1ヶ月くらい姿はみなかったのだが、どうやら近所に住んでいた幼馴染のヤッちゃんと旅行にいってたらしい。
気楽な身分だ。
オレは脚のつま先でアニキの腹をつつく。
「ンなとこで寝てっと踏むよ」
ぐむぐむっと腹の部分を踏むと、ようやくアニキのまぶたが開く。
ふわあっと欠伸をかみ殺して、目を開くがなんだか憔悴しきった様子で、いつものアニキ特有の快活さがない。
「ンァ?……ああ…力尽きてた」
「え?アニキが力尽きることってあるのか」
生まれて初めて聞いた言葉に、アニキは天井を見上げて黄色いとか呟き、
「ヤスが朝までしつけえーんだ。あの性欲魔人め」
ぼやくように呟きながら、腰をあげて二段ベッドの梯子に脚をかける。
そろそろこの二段ベッドもどうにかしないと、ベッドが壊れたときにオレの命はない気がする。
「え……せいよ…?何してたの?」
「セックス」
正直でごまかすことを知らないアニキの言葉は、そのまんま端的である。
この学区内一番のモテ男と名高いヤっちゃんが、このむさいアニキと何故セックスしてるんだ。
なんの冗談だろう。
「はああああ?」
オレは思わずすっとんきょうな声をだしてしまった。
「悪いか?」
悪くはないが、アニキ遊ばれてるだろ。ソレ絶対。
小さい頃から、アニキは何をするでもヤっちゃんにべったりで、オレはそれがうらやましかった。
二歳年上のアニキたちに、どうやってもついていけなくて、そのうちこの辺でも有名な不良になっていた。
どうしても追いつけない、だからオレは別の道にいくことにした。
「ヤっちゃんモテるでしょ。何でアニキと?」
「何でだろうな。俺がしりてえよ」
ちょっと困ったような表情を浮かべる。
アニキもそれなりに男前である。
それに、ヤっちゃんが絡まれたときは必ず助けにいっているのだ。
王子様な存在ってわけかもしれない。
「友達でしょ」
「ンー、いや、付き合うことにしたから、恋人だな」
付き合うか。
男同士で、何も生まれないのに……。
何故それができてしまうのか不思議である。
「……そうか……まあ……昔からアニキはヤっちゃんしか見てなかったからな」
そうだ、いつだってアニキの最優先事項は、ヤっちゃんであった。
どんなときにでも。
オレは家族の中でも、いつだって一人だった気がする。
「そうかな、顔は好きだけどな」
「でも、いくら顔綺麗でも男だよ。男相手に、ヤる気になるの?」
先輩はどんな気持ちでオレに好きだといったのだろう。
性的なキモチもオレに生まれるのだろうか。
「わからん。」
アニキは、唸るようにオレの問いかけに答えた。
「でも、ヤっちゃんのこと抱いてるんでしょ」
ヤっちゃんは、子供の頃は女の子に間違われるくらいの容貌だった。
今は成長して、少し男らしさが混ざっているけども、中性的にも見える。
だからといって、オンナではない。
性的欲求に訴えるかと聞かれると、悩ましい。
「うー……いや、まー、俺が抱かれてるっていうかな……」
アニキは言いずらそうにもごもごと口を動かして、盛大にため息をついた。
「はぁああああ?」
思っていたのとは逆だった。
そりゃあ、体力もなくなるだろうが……アニキを…ね。
「突っ込まれたら勃っちまうし、イけるし、キモチイイし……」
声が少しなまめかしさを含んで聞こえる。
「……うーん」
「どうした」
このアニキがヤっちゃんに突っ込まれて、よがっているのだろうか。
あの巨体を震わせて、受け止めているというのか。
「想像したら、ちょっと……勃った」
オレも大概かもしれない。
アニキで想像していたはずが、気がついたら先輩の姿になっていた。
金色の綺麗な髪を汗で張り付かせて、恥ずかしそうな顔を想像したら、息子が反応をしめしたのだ。
オレも、あの人が好きなのかもしれない。
わからない。
「想像するなよ……」
心底嫌そうにアニキが吐き捨てる。
「だよな、男に告白されて、本気だと思う?」
付き合うってことは、ヤッちゃんにきっと告白されたのだろう。
「さあ……ヤスには強姦されたからな。本気だと思った」
「……強姦って……」
この巨体を強姦って、クスリでも盛ったのだろうか。
「AV見てたら殴られた」
「命知らずだな」
殆ど、ダメージを受けないこの体を腕力でどうこうしようとしたというのか。
ヤっちゃんの腕力はたかが知れているが弱くはない。
急所さえつけば昏倒させることくらいはできるのかもしれない。
「命がけだろ……本気じゃねえとそこまでしねえべ」
「オレ、男に告白されて、冗談だろってったら怒らせた」
触るなといわれて、ショックだった。
正直、泣きそうになった。
ちょっとだけ、気持ちが揺らいだ。
「本気なら本気を返さなきゃ、男じゃねえよ」
逃げるなよとつけたしたアニキに、オレは誓った。
多分、オレは、アニキから以前逃げた。
ヤっちゃんのことしか見ていないアニキに構ってほしくてしかたなくても、何も得られなくて。
一緒についていきたかったのに、ソレを諦めた。
「だな……今度会ったら、ちゃんと言うよ」
「オマエも、そいつが好きなんだな」
「わかんねーし、ありえねえけど、そうかもしれない」
キモチなんて、すぐにどうこうなるものじゃないけど。
今度、会えたら……伝えよう。
新学期になっても、オレは先輩に会うことはできなかった。
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