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変身2=SIDE S=
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教室に入ると、俺の髪の色を見るなり部屋の中がざわついた。
たかが髪の色だろ。
俺は気にせずに自分の席に腰を下ろして、窓の外を見やる。
西覇は、寒いのに校門で検査を続けている。風紀の仕事だが、俺がこんな格好をする前にはなかった日課である。
西覇の仕事がなくなればいいとおもう。
一緒に通学だってしてみたいと思うし、それには俺が変わってもっと一緒にいられる時間をつくらなきゃならねえ。そのためなら、髪の色なんて簡単に変えられる。
「……瀬嵐君、あの…その…今日の宿題の提出なんだけど」
気弱そうなひょろっとした男が手にいっぱいノートを抱えて俺の席の前に立っている。
数学の宿題のノート提出が今日だった。
もちろんやってあるが、こいつブルブル震えてんの?
今まで宿題のノートとか誰もとりにきたことはなかったし、俺も提出しなかった。
髪の色を変えたからちっとは声かける気になったのかもしれない。
「あ”?……数学のか。ちっと待ってろ」
ぺたんこのカバンからノートを取り出すと、そいつの持ってるノートの上におこうと腕をあげた。
「ひっ!!」
殴られると勝手に思ったのか、男はしりもちをついて倒れて、ばさばさとノートが散乱した。
……ンなに、怖がられてもな。
俺、そんなに強くもねえしな。
俺はふっとため息を漏らして、散乱したノートを拾ってもう片方の手をしりもちをついた男に差し出す。
「立てっか?」
震える手で手を掴まれたので、ぐっと引っ張って起こしてやり、
「ほらよ、もう落とすなよ」
拾ったノートをそいつに手渡して、俺は椅子に腰を下ろす。
「あ…ごめんなさい、ごめんなさい…ありがとう。」
慌てたように立ち去る背中を見送り、俺は机から教科書を取り出す。
ちょっと前まではナニが書いてあるかまったく理解できなかった異端の書だったそいつは、今じゃ全部理解できる。
それもこれも、西覇のお陰だ。
少しものが分かっただけで、何もかもが違って見えるなんて思わなかった。
何もかも、いい方向に進んでいるように思えた。
「ほらよ。おかずに食えよ」
自分のカレーのほかに、コロッケを二つ買い足してあたたかい袋を西覇の前に差し出す。
家の手伝いでバイトもしていないようだし、こずかいもあまり貰っていないのは普段の言動から分かる。
「成春さんから貰うと凄く美味しく感じます。何ででしょうね」
嬉しそうに受け取る顔がとても可愛い。
メガネの奥の鋭い目を細めて微笑まれると、たまらない。
いい加減本性を知っているのだから、敬語で話すのもやめてほしいのだが、分かってるのかな。
生徒達が俺たちを不審そうに見ているが気にしない。
髪を染めてもやっぱりレッテルっていうのはなかなか剥がせない。
「カンニング疑惑……だってよ。今日、呼び出し食って放課後再テストだってよ」
別に実力だし慌てることもない。
前までの俺なら、そんなことになろうものなら拗ねて暴れていたかもしれない。
そんな再テストは、ふけちまうに限ると受けもしなかっただろう。
「仕方ないんじゃないですか。暫くは」
「そうだなァ。強いて言えば面倒だけど」
時間の無駄だとも思うが、自分でくっつけてきたレッテルだ。
尻を拭うのは仕方のねえことだ。
「図書室で待ってますから、終わったら迎えにきてください。一緒に帰りましょう」
笑顔でコロッケを食べながら言う、西覇の表情に俺は強くうなずいた。
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