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帰り道=SIDE H=
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「中学までは、クラスの連中からも先生からも頼られててさ、こんな風に呼び出しとかされたことなんかなかったんだよな」
夕暮れの昇降口で靴を履き替えながら、成春はぼそっと呟く。
一年半かけて貼ってきたレッテルを剥ぐのは同じくらい時間が掛かるだろう。
再テストの結果、この間の考査の結果が実力と認められたのと、髪色を変えたことで信用は一応されたと言っていた。
「それは、成春さんが努力してたからでしょう。内申もよくなきゃ、うちの高校は入れませんよ」
「そうだな。努力もしてたし、親も期待してたみたいだ。今じゃ、もう諦めたみたいだけどさ」
夕日が校庭を照らすのをなんとなく横目でみながら、成春の隣を歩く。
「うちの親なんか、勉強は暇つぶしにやってるとしか思ってないですよ。大学も奨学金とれるところを狙ってます」
「西覇さ、俺には普通にしゃべってくれ。敬語とか使われっと、なんか距離感じる」
そう言って寂しそうな表情をされると、なんだか弱い。
「……気をつけます。感情が高ぶると素になりますけど、こっちも癖になってて……」
オレは成春の肩一個分後ろを歩いているが、その長い脚をゆっくりとして歩調を合わせてくれているのだなと気がつく。
「そっか。まあ、変えるのはユックリでいいぜ。西覇のおかげで、俺も色々変われそうだ」
「本当のことを言えば、成春にはあまり変わってほしくないです」
オレの言葉に、ぴたりと足を止めて成春はこちらを向いた。
無意識に呼び捨てで呼んでいた。
「……え」
「つまらない独占欲です。中学のころのように、誰にでも頼られて、いっぱい仲間がいて楽しそうな成春は見たくない」
「嫉妬してくれるのか」
「多分、嫉妬です。僕だけの成春でいてほしい」
人なんて見てくれや、実力だけを見て受け入れたり拒絶したりする。
オレもたぶん、兄と父のことが広まれば、きっと拒絶される。
「……ダチとかできるかわからないけど、そんなもんより西覇が特別だ」
駅前までつくと、成春はオレの顔をじっと眺めてちょっと頬の辺りをこわばらせながら耳元で囁く。
「今日、俺の家こい。……親、出張でいねえから」
こころなしか、首筋が赤くなっている。
オレはごくっと思わず生唾を飲み込んだ。
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