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緊張=SIDE H=
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成春の親は幼いころに離婚していて、母親と二人暮らしだそうだ。
世界を飛び回る商社のキャリアウーマンらしく仕事で忙しくて、出張が多いらしい。
ぽつぽつとそんなことを語る成春に、夏休みの前半は殆ど成春の家に通っていたが、母親にでくわしたことがなかったなと今更ながらに思う。
「俺の成績がイイと、そん時だけは喜んでくれるからよ。ガキの時は必死で頑張った」
たった一つ与えられた至福の時も、簡単に得ることができないと悟った瞬間に全部壊したくなってしまったのだろう。
「オマエさ、いつも、あのキャベツ弁当必死で食ってるよな。その気持ち分かるからさ」
「僕の母は、帰ってもいないし、朝寝る前にあの弁当だけ作って寝るから。殆ど、弁当としか会ってない感じですけどね。どんなにイイ成績とっても褒められませんし」
朝起きて対面するのは、いつもあの二段重ねの弁当だけだ。
夕方、手伝いに呼ばれるときと休日しか顔を合わせない。
オヤジはいるが、寝転がっているだけで殆どいないようなものだ。
「首席でもか……そりゃあ……キツイな」
「腕っ節くらいかな、あの人たちに興味もってもらえるとしたら。あ、夕飯……」
興味を持ってもらえるもうひとつのアイテムである飯のことを思い出す。
今日は平日である。夕飯の準備は、いつも大体オレがしている。
オレはスマホを取り出して、ひとつ年下の兄弟に電話をかける。
「オレ。サナ、今日はオレ帰らないから、夕飯頼む」
”セイ兄、ちょい待って今、敵しばいてるとこだから。キタラ、今日補習してるからそっちかけて”
ガスガスという人を蹴倒している音がする。
どうしてこうもオレの家族は……こんなのばかりだ。
オレはもう一度、もう一人の弟に電話をかけなおす。
「キタラ。今日、夕飯オマエ作れ。オレは帰らない」
”マジで?珍しい、朝帰り?セックス?しょうがねえなァ、早く童貞治してこいよ”
元々童貞じゃねえって。
「うるせえ……」
下品なことを言う、弟に呆れながらため息をついて電話を切る。
なんでウチにはこういう兄弟しかいねえのだろう。
面白そうに隣で笑う成春を見上げて、肩を落とす。
「俺にもそういう風に話してくれりゃあイイのになァ」
「そんなに敬語嫌いですか」
歩きながら笑顔を見せる成春は、そういうわけじゃねえよと言いながら、オレの肩に手を置いた。
「なんとなく、壁を感じるからかもしれねえな」
成春の家の前に止まり、鉄の門を開くと玄関へと向かう。
「ていうか、嘘くせえ。僕っていうのも似合わないし」
確かに外面でしか、僕なんていうわけがない。物心ついてから、ずっとオレだと思っている。
ガチャガチャと鍵を回すと、玄関を開けてオレを招く。
いつも整えられた綺麗な玄関で、ディスプレイされた小物も品がいい。
玄関の扉を閉めると、成春は靴を脱いでオレの肩に手をかけた。
「なあ……オマエ、俺が家誘った意味分かってるか?」
おもむろに聞く成春の顔が、僅かに緊張しているように見えた。
一週間前に起こったできごとを忘れているわけではなく、また、フラッシュバックしてしまうのではないかという不安でいっぱいなのが見て取れる。
「……分かっているつもりです」
靴を脱いで腕を伸ばして、成春の腰をぐっと引き寄せる。
成春は、俺の頭の上に自分の顎を置いて、ふっと緊張を解くように息を吐き出し、
「オマエは、俺の特別だ。ちいせえことに嫉妬する必要はねえ。だから、特別のことをするぞ」
一気に告げると、ちょっと照れたのか顔を少し赤くして、成春はオレの体からそっと逃れる。
「ってことで、先に風呂入ってこいよ。」
即物的な気もして、オレの体温も上昇してしまう。
思いっきり、ヤリましょう宣言である。
激情に任せるより、なにより羞恥心が倍増する。期待してないわけではなかったが、改めて言われるとクルものがある。
最初の一回は、成春は覚えていないし、ノーカンにした。
だから、今日が本当の最初のセックスになるのだ。
促された浴室でタオルを手渡されながら、らしくもなくオレは少し緊張をしていた。
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