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副会長=SIDE S=
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引き戸を開き、12月の寒い風にあおられながら、ベランダに出る。
コート着ても普通に寒いし風邪はひくかもしれない。
振り返ってベランダの手摺に腕をかけて、そいつは俺の顔を見上げるように向き直る。
「僕のこと、知ってるよね」
居丈高にも聞こえる口調で言われるが、まったく見覚えもないので首を横に振る。
「初対面だろ。つーか、さみい、早く用件言ってくれねェ?」
記憶の片隅にも残っていない、イケメンさんに俺はいい加減いらいらしてくる。
ちょっと驚いた顔で、俺の顔を何度もちらちらと見やりながら、
「生徒会副会長の楠木奏佑(くすのきそうすけ)です。」
聞いたことはちらっとはあるかもしれない。
どっかの会社のお坊ちゃんで、モデルをやっているほど容姿端麗、ファンクラブとやらも男子校なのにあるらしい。
家来のように、その軍団を引き連れて歩いていると風の噂で耳にした気もする。
王道?高校っぽいが、普通に進学校なのに受け入れられているのが、また七不思議ではある。
「ナニ?俺、校則、今はちょー守ってるけど?」
髪も染めたし、カラコンは入れていない。おしゃれピアスも、とりあえず抜いてきてる。
「誤解しないでほしい。僕は君を注意に来たわけではない。」
同じ僕でも、西覇の僕のほうがなんとなく嘘っぽい僕で好きだなあって思う。
こいつの僕は妙に鼻について、いやだ。
「いいから早く、言えって。凍死すンぜ」
ちらっとベランダの外を見ると、一年が体育をしているようだ。
思わず目で西覇がいないか確認してしまう。
「……君を好きになった。付き合ってほしい」
想定外の衝撃的な言葉が耳に入り、俺は、驚いて楠木の顔を何度も見返す。
つーか、俺に告白してるのか、こいつは。
ま、男に告白して、鼻で笑われてショックを受けたのはたった4ヶ月前だ。
なので、ちゃんと真摯に返してやりたいのだが。
「悪ィ。俺、付き合っているやついるから。ゴメン」
しっかり頭を下げて謝ると、とりあえずベランダから脱出しようと背中を向ける。
「……その人は、この僕より優れているんですか」
腕をつかまれ、必死そうな顔にぶつかる。
今まで、振られたことなど経験したことがないのだろう。
「人を好きになるのに、優劣なんかねえよ」
「諦めませんから。瀬嵐君。僕は、君のその顔と頭脳を認めたと言っているのです」
所詮、形しか見てないだろう。
地を這いずっていたときに、誰も声をかけてくれなかった。
教師でさえ見放した。
それなのに、すべて変わってからすきだのなんだの言われても、正直信用ならねえ。
俺は確かに変わったかもしれない。
変えてくれたのは、あいつだ。
「アリガトウよ。でも、俺、そいつしか見えねえの。髪の色も勉強頑張ってるのも、全部そいつに認めてほしいからだ。お前の評価はいらねえんだ」
「瀬嵐君は、僕に愛されるべきです。」
なんだ、こいつ。
あまりの発言に呆れを通り越して、肩を落として振り返る。
「ハァ?ゴメン、押し売りは勘弁してくれ」
俺は腕を振り切ると、暖かい教室に戻り、手足の痺れを癒すように身震いをした。
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