アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
脅迫=SIDE S=
-
昼休みも十分にとったといえず、大事な時間もふいにされてしまったので、俺は非常にはらわたが煮えくり返っていた。
西覇も不機嫌極まりない顔をしていたが、それ以上に俺も不機嫌だった。
人が髪を染めた途端、掌を返したような押し付けの好意に胸糞が悪くなる。
俺が髪を染めたのは、西覇との時間がもっと作りたかっただけで、そのほかの奴等にくれてやる時間なんか露ほどもない。
授業が終わるチャイムと同時に俺は教科書を持ち帰る気分にもなれず、からっぽの鞄を担いで立ち上がると椅子を蹴って、教室から出ようと扉に向かう。
「瀬嵐君」
楠木の不快な声と、その取り巻きどもに行く手を塞がれ、俺は持っていた鞄を握り締めて深くため息を漏らした。
いい子ちゃん達は、帰って塾でも行ってろっての。
「どけ。邪魔だ」
「あの生意気な一年生なら、制裁を加えておいたよ。今頃泣いているんじゃないかな」
半笑いで言った楠木の胸倉を掴もうとすると、取り巻きどもが数人がかりで俺の腕を万力で掴む。
「テメェ、西覇にナニした?!」
「一年生の首席だよね。少しばかり綺麗な顔してるけど、君とはつりあわないよ。この学校の空手部の僕の友達に頼んで、生意気な口が利けないようにするように言ったんだ」
俺は掴みかかられたやつらを腕を振って振り払い、バタンバタンと音をたててなぎ倒す。
乱闘だと大声をあげるクラスメイトが、非常にわずらわしい。
空手部の奴等…って、全国大会級の奴等だった気がする。
ふざけんな、一般生徒に手を出していいと思っているのか……。
流石に空手の猛者どもに絡まれたら、あの細っこい体じゃ、喧嘩慣れしていても危険かもしれない。
「何が目的なんだよ」
「だから、君が僕のパートナーになればいいんだよ。そうしたら、あの一年生にはもう手出ししないよ」
自分の手は汚さずに、明らかに自分の目的を力ずくで遂げようとする目の前の男が気に入らなかった。
明らかに脅迫だ。
「そんなんで、俺がオマエを好きになると思っているのか?」
「別に、好きにならなくてもいいですよ。貴方を手に入れたいのです」
「……最、悪だな。オマエ」
別に男が好きなわけじゃない。
ただ、西覇が欲しいと思っただけだ。誰でもいいわけじゃない。
他の誰でもいいわけじゃない。
「それにあの一年生より、僕のほうが抱き心地はいい筈です」
根拠のない自信に溢れている男に、俺は深くため息をついた。
西覇は、今、大丈夫なのだろうか。すぐに飛び出して駆けつけたいのに、教室の扉はガタイのいい男達に塞き止められている。
「西覇が怪我とかしてたら、テメェぜってえに許さねえからな」
何度も引き剥がしているのに腕にしがみつこうとする男達を振りほどきながら、石壁のような男らへ突進しようとする、俺の目の前にたった楠木は、勝利を確信したようににっといやらしい笑いを浮かべた。
「僕が彼らに制裁をストップするように言ったら、僕と付き合ってくれますよね」
何よりも……西覇が大事だ……。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
39 / 46