アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
最強の男=SIDE S=
-
西覇に危害を加えられたらと思うと、いてもたってもいられず、目の前の楠木の言葉に分かったと答えようと口を開いた。
「遅いと思って迎えにきたら、喧嘩ですか」
制裁を受けている筈の西覇の声が響いて、教室の前の扉から鞄を抱えた帰り支度で俺の教室へと臆した様子もなく入ってくる。
顔にも服にもまったく乱れはなく、髪筋ひとつも艶やかで綺麗である。
「西覇、無事だったか……」
「成春さんは無事じゃなさそうですね。っと、離してくださいね。僕のですから」
クラスの面々が見ているのにもかかわらず、所有の宣言をすると、俺の腕を掴む男達の腕を掴んで、鮮やかなしぐさでごきごきっと音をたてて間接を外す。
屈強な男達が、教室の床で転げまわるのを冷静な目で見下ろし、
「不器用なもので、うまく剥がせなくてすみません。でも、これは、多勢に無勢の成春さんを助けるための正当防衛です」
と、鋭い目つきのままでそういい置き、するっと視線を楠木へと向けた。
「……ちょっかいだしたら、どうするか覚えてますよね?副会長さん」
楠木は、周りで悶える親衛隊を恐怖の眼差しで見つめて、じりじりとあとじさる。
「き、きみは、あの空手部のレギュラーをどうしたんだ」
「ああ……アレも副会長の手先だったんですね。僕は手荒い勧誘かと思いましたので、裏庭にお誘いして軽く試合をしてあげました。今頃、いい夢見ているかも知れませんね」
ふっと笑って、逃げ出す楠木を見送る男は、優等生の首席とは程遠いような気がした。
ちょっとでも心配した俺は、西覇の力を完全に見誤っていたらしい。
なんだか力が抜けてしまい、思いっきり肩を落として力なく笑う俺に、西覇は困ったような表情を浮かべた。
「成春さんは、やっぱり今までどおりの方が、変な虫がつかなくてよかったかもしれませんね」
俺の腕を引いて廊下に出ると、眼鏡の奥の鋭い瞳を曇らせた。
金髪の頃は誰にも見向きもされなかった。
怖がられて距離をとられていた。
「……そうだな。西覇に害が及ぶとなると……俺……」
何かされそうになったと聞くだけで肝が冷える。
いてもたってもいられなくなる。
俺の全部を明け渡してしまってもl惜しくないと思える。
それがスキだってことなんだろうとは思うけど。
「心配してくれたんですね」
ちょっとだけ、声のトーンがあがって嬉しいと思ってくれているのが分かる。
階段をくだりながら、腕を引く西覇の首筋を眺める。
「いてもたってもいらんねえくらいに……」
「……成春さん……。そんな可愛いことばっかいわないでください」
首筋が少し赤らんで見える。
ぎゅっと握った手のひらが熱い。
「オマエが、大事だ……だから……」
「成春さん……僕は大丈夫だから。変な脅しとかには負けないで。僕を信じて」
振り返った西覇の顔は、きりっとした男らしい表情で思わず、強く頷いた。
多分、西覇は、この学校で最強の男だ。
だから、俺は、信じて一緒にいよう。
どんなに卑怯な手を使われても、きっと西覇は屈しないだろう。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
40 / 46