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花発多風雨=SIDE H=
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ぼんやりと目を開くと泣き出しそうな成春の顔が見えた。
そんな顔させたかったわけじゃないのに、言葉もでてこずにオレの手を握った成春の手をぐっと握り返した。
出血多量と傷口から雑菌が入って一週間ほど高熱を出していたらしく、朦朧としていてあの時のことはあまり思い出せそうになかった。
成春がアニキを呼んでくれて、オレを救い出してくれたのはなんとなく覚えているのだが、鮮明な記憶でもなくて、目の前の成春をじっと見つめて声をかけようと口を開く。
「……しげ……はるさ……」
「……ムリすんなよ。内臓にギリ達してなくって助かったんだし」
掠れた声を出すのも少し苦しい気がして、オレは口をつぐんだ。
成春はオレの頬をさすって、掌になんども唇をくっつけていた。
オレは生還したことに喜んでくれているのだと思い、その手を強く握り締めた。
「……あのさ……西覇……」
何か言いたそうな表情を浮かべて成春はオレをじっと見つめている。
少し憔悴したような様子は、きっとオレが目を覚ますまで看病してくれていたのだろう。
「……なんでもねえ……オマエが生きててよかった」
くしゃっと泣き出しそうな顔のまま、浮かべる笑顔が本当にいじらしい。
本調子に戻ったら、抱きしめてこころからこの人をオレのものにしたいと切に願う。
副会長は、東高との繋がりを逆にバラすと脅せばいいだろう。
「オマエが死んだらって思ったら、世の中真っ暗になっちまった」
静かにオレに語りかける成春は、オレの頬に自分の唇をくっつけて癒すようにぺろぺろと舐めてくる。
看護婦もこない時間だけど、どうにもくすぐったくて仕方がない。
「俺は、オマエがいないこの世で生きられる気がしねえんだ」
オレの髪に指を絡めて、ちょっと笑みを浮かべながらオレの目をじっと見る。
「……俺はずっと……これから一生、オマエのことがスキだ……」
唇に唇を落としながら、熱烈ともいえる告白を囁き、ゆっくりとオレの唇を貪り何度も何度もついばみを繰り返す。
流石に、こんな状態なのに勃起しそうになり、オレは困惑しつつも成春の腰へと腕を回した。
「……西覇……。そろそろ……帰る」
ちゅっちゅっと夢中にキッスを繰り返し、何十分か経過したころ離れがたそうな表情を浮かべて成春は椅子から腰をあげてオレを見下ろした。
「……気をつけて……ください」
「ああ……。あんまムリしねえで、ちゃんと寝ろよ。オヤスミ」
優しく髪に触れる手のひらが離れて、成春はオレの顔を再度見返してちょっと顔を歪め、取り繕うような綺麗な笑顔を見せて、病室のドアから出て行った。
その時は、看病に疲れているんだろうなとしか思わなかった。
成春の決意もなにもかも……オレには分かることはなかった。
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