アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
人生足別離=SIDE S=
-
父親のいる四国の高校に、俺は転入することにした。
退学の手続きも、転入の手続きもすべて一週間でこなした。
俺がいる限り、楠木は西覇を狙うかもしれない。元の金髪に戻しても、今度は別のやつが因縁をつけてくるに違いない。
その度にこんな思いをするのはいやだ。
幸い西覇が俺に勉強を教えてくれたおかげで、スムーズに転校もできそうだった。
「急にパパのとこいくなんて、らしくないわね」
面倒そうに言う母親は、少し不審に思っているようだが、相変わらずわれかんせずである。
自分のしたいようにする。
西覇に、別れすら告げることができなくて、目が覚めた日以来病院にもいっていない。
薄情と思うだろうか。
すげえスキだから、一緒にいるのが怖いなんて思う日がくるとか思わなかった。
「母さんは、何で父さんと別れた?」
「嫌いになりたくなかったからよ」
「そっか……」
荷物をダンボールに詰めこんでいく。
「変な子ね」
コートを手にして、ふっとそのポケットに堅いものがあることに気づく。
薄いフレームのダテ眼鏡。
アイツがいつもかけていた眼鏡。
なんで……ここに?
そっと開いてかけてみる。全く度が入っていないので世界は変わらない。
これがなくなっても、あいつの世界はかわらない。
もらってもいいよな……これくらい、俺にちょうだい。
本当はオマエと一緒にずっと…いたかったよ。
だけど……。
オマエがいない世界は、ムリなんだ……西覇。
俺は手にした眼鏡を大切に胸のポケットに突っ込んだ。
……花に嵐のたとえもあるぞ さよならだけが人生だ。
第一部 完
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
46 / 46