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1 山下編
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胸が痛い。
じくじくと痛む。
最初は、単に好みだったから気になった。
可愛いな、純粋そうだな。
囲ってしまって、俺だけのものにしたいな。
そう思っていた。
チラリと見かけた時。
あぁ、やっぱり好みだな。
そう思って近づいた。
こんなにハマってしまうなんて。
そう。
小夜が、居酒屋でアルバイトをしているのを見て、堪らなくなった。
俺なら昼も夜も働かせないのに。
そんなに働かないといけないくらい困窮しているのなら助けたい。
そのためには風見と引き離す必要がある。
そう、思っていた。
だけど、いま俺の残ったのは小さな茶色い名刺入れだけ。
中に入っている名刺を見ては、涙が浮かぶ毎日だ。
惨敗。
それでも消せないアドレス。
手放せない名刺入れ。
杉 小夜・・・欲しかった。
もしかしたら、あんな暴力的な風見が怖くて離れられないのかも。
そう思ったら益々気持ちを殺せなかった。
一度、居酒屋を覗いた。
生き生きと働いて、カウンターに座る風見と笑顔で嬉しそうに話をしていた。
やがて帰った風見を確認して、待ち伏せて声をかけようとしたら、なぜかアイツが戻ってきた。
店内を覗くと公衆の面前で抱き合っていた姿を見て、ああ、無理なんだ。
俺は無理なんだって実感した。
握りしめた名刺入れ。
捨てられない、俺の宝物。
小夜、好きだよ。
もう、俺の事なんて小夜は忘れてるだろうけど・・・。
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