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果ての先に。
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まあ、驚いた。
次に吹き出した。
「じゃあ、家族経営ってことになるな。」
拓篤が働こうかと思案していた店は、蓋を開けてみれば、兄の店だったらしい。
「ふふ。ほんとだ。」
シュークリームを啜りながら、拓篤が笑った。
拓篤に起きた事件は、母親の襲来、兄弟の紹介だったらしい。
そして、その兄貴は就職を考えていた店のオーナーだという。
「まあ、ゆっくり考えろ。いざ就職浪人したら、俺が養うわ。」
「アハハッ。ありがとう。」
あながち冗談でもないのだが、拓篤は笑い飛ばした。
「明日は俺、一個しか入ってないけど奏太さんも?」
「ああ、赤口(しゃっこう)だからな。」
「しゃっこう?」
広告紙に書いて見せた。
赤口。
仏滅に次いで不吉な日とされる日だ。
ただし、正午を挟んだ11時から13時までの時間は吉となるため、この日は昼の式が多い。
逆にそれ以外の時間は凶となるため、吉凶を気にする人は挙式を挙げないことが多い。
「ちなみに、車買った人が納車を嫌がる日でもあるんだ。」
赤。
つまり血や火のイメージがある。
火災を連想させることから引っ越しや家の購入、そして事故を連想させることから納車は嫌煙されることが多い。
「とは言っても、気にしないカップルも多いんだ。ただ、家族からNGが出て、日程変更する場合も多いんだ。」
へぇ。
「だから、昼間の式しか入ってないんだ?」
「そ。しかも身内だけのカジュアル式。」
うーん、長くホテルで働いてるけど、知らないことが多いなぁ。
拓篤は改めて奏太のことを尊敬した。
「奏太さんて凄いね。」
「単に仕事の知識だよ。」
頭を撫でてもらった。
「さ、風呂入って来いよ。明日は母ちゃんと遊ばなくていいのか?」
「うん、こっちの友だちと適当に遊んで帰るって言ってた。」
へぇ?
「なら、仕事終わったら地下に遊びに来いよ。」
「うん。」
現実となるか分からないが、結婚式場を兄貴さんは作る予定だ。
どういう事を考えながら、お客様に提案していくのか見せてあげることはできる。
引出物のカタログも、きっと見ているだけでも楽しいだろう。
結婚式ないろいろ決めることが多い。
例えば、会場。
テーブルクロスの色、ナプキンの色、畳み方、卓上に置く花や、席札の素材。
言い出したらキリがないほど、決めていくことが多いのだ。
ひとつひとつ準備を重ねて、素敵な式にしていく。
その工程こそが、夫婦となるふたりの最初の共同作業だ。
「お風呂いってくるね。」
「おー。」
今日は疲れた。
明日はひとつ式が入ってて、15時からお客様と打合せ・・・あぁ、眠い。
這うようにベッドに入った。
せめて拓篤が風呂から上がってくるまで・・・おきて、なきゃ・・・。
風呂上がり。
ベッドでスヤスヤと眠りについた奏太を見て拓篤は微笑んだ。
「お仕事、お疲れ様。おやすみ。」
起こさないように気をつけながら、ゆっくりと唇を重ねた。
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