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next move 2019年6月19日
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この日、俺はもう一歩踏み出すことができた。
「3人ともおめでとう。モデルをよろしくお願いします。」
職員室で拍手された。
凄く、嬉しかった。
志望動機や夢を書くよう宿題を出されたけれど、そんなの気にならなかった。
お母さん!
どうか、俺を見つけて。
そして、会いに来て。
一歩、お母さんに近付いた。
それは、間違いないのだ。
大輔さんに合格したことを連絡したあと、出された宿題をやるべく机にかじりついた。
『母が幼稚園で生き生きと働く姿に憧れて母のようになりたいと思いました。』
34文字。
ううーん。
『子どもが好きで、子どもと触れ合える仕事をしたいと思って志望しました。』
奇跡の連続34文字。
『幼稚園で働いていた母と、どこかで一緒に、いつか働く事を夢見ています。』
・・・ある意味、俺って天才なのかも。
3連続、34文字だ。
全然100文字に到達しない。
頭を掻きむしった。
どうしたら良いんだろう。
目を閉じて考えた。
きっかけって、大吾だよね。
小さくって、丸くって、ふわふわしてて、指を出すと、小さな手でギュッと握ってくれた。
お母さんが居なくなって、母さんがやってきて一緒に住んで息苦しかった。
そしたら大吾が産まれたんだ。
小さな手。
お猿さんみたいな顔。
そのうち、歩行器に収まるようになって。
そしたら凄い勢いで歩行器を乗り回すようになって。
ふふ、暴走歩行器だった。
歩けるようになって、中学の制服を着た俺の後ろをついてくるようになった。
単語を話すようになって、宇宙語みたいな発音で。
でも、あっという間に、会話が出来るようになった。
そっか。そのまま書けば良いんだ。
サラサラと書き出した。
『弟の成長と可愛さに触れるうちに、子どもと触れ合える仕事をしたいと思いました。数ある職業の中で幼稚園教諭を選んだのは、母が幼稚園で働いていた記憶があるからです。いつか、母と一緒に働きたいと思っています。』
・・・ちょうど、100文字。
気がつけば、大輔さんが帰ってくる時間だった。
いけない、ご飯作らなきゃ。
光太郎はペンを置くと、キッチンに慌てて向かった。
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