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大人の話
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沈黙が流れた。
その沈黙を破ったのは、やはり父親だった。
「あなたに嫉妬しました。光太郎に一心に信頼され、憧れているあなたに。」
山下は微笑んだ。
やっぱり、やっぱりこの人は。
「財津さん。あなたはやっぱり光太郎の父親ですよ。光太郎は、あなたのその真っ直ぐで、自分の弱いところを恐れずにわたしに曝け出す、そのあなたにソックリだ。あなたの血をしっかりと光太郎は引いています。」
机を回って、肩に手を置いた。
「友だちになりませんか?他人に預けるというのが抵抗があるというのであれば、今日からわたしとあなたは友となれば良い。友人に子どもを預けるのであれば、あなたの心も軽くなるのではないですか?」
「・・・。」
最後の一言を言えないようだった。
「山下さん・・・。」
「はい。」
父親は立ち上がって、俺の手を握った。
「お預けします。光太郎のことを、よろしくお願いします。」
こうして、光太郎はうちで住むことになった。
卒業式までは、親元で。
卒業後は、俺の元で。
荷物は少しずつ運び入れることにした。
光太郎の荷物がどれくらいあるのかが分からない。
本気で4階に手を入れようと思う。
さ、あとは光太郎に話をするだけだ。
きっといまごろヤキモキしているはずだ。
「お送りします。そして、光太郎くんと話しをさせてください。」
「はい、よろしくお願いします。」
俺たちの想いは同じだ。
光太郎を愛している。
愛しているからこそ、父親は後ろめたくて距離を置いてしまった。
もっとガツガツわかりやすく愛してやれば良かっただろうに。
難しくて単純な親子関係だ。
お互い素直になれば、上手くいく。
こんな面倒なことも、光太郎だから間に入る。
父親を乗せて、車を出した。
光太郎が伸び伸びと過ごせるように。
最前を尽くすのが俺の役目だ。
そして、その恩恵として光太郎を手元に置く事ができる。
光太郎はどんな顔をするだろうか。
そんなことを思いながら、ハンドルを切った。
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