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スーツを決める前に、一旦、いわゆる喫茶店に入った。
昔ながらの懐かしい匂いのする喫茶店だ。
俺がそういう時代だったからかもしれないが、有名なコーヒーチェーンのコーヒーより、サイフォンで淹れる香り高いコーヒーの方が好きだった。
客のめくる新聞の音。
スパゲティをすする音。
温かな湯気をたてるおしぼり。
硬いカフェの椅子よりも、このゴワゴワとした昭和感のあるところどころ禿げたソファの方がよっぽど居心地が良かった。
ここではゆっくりと時間が流れる。
「ここのタマゴサンドは美味いぞ。」
「食べるっ!」
コーヒーをふたつとタマゴサンドをひとつ注文し、光太郎の顔色を確認した。
「お前、シンドイんじゃないか?」
「ううん、まだ平気。」
足元はさっき買ったばかりのスニーカー。
「靴、嬉しい。」
「次からは、バイト代で好きなものを買えよ?」
「うん!」
バイトと聞いて喜んでいる。
可愛いやつだ。
「わ、美味しそう。」
ふわふわたまごのサンドウィッチ。
一緒についてきた塩を適量かけて食べる。
「んまっ!!大輔さん、美味しいッ!」
「良かった。」
休憩を挟んで、入学式のためのスーツを買いにスーツ屋へ入る。初めてのスーツのため、首回り、肩、腕の長さなど採寸を受けて、合う体型を教えてもらった。
ワイシャツを合わせて、ネクタイを選ぶ。
つるつるした生地を光太郎が選んだため、結んでみろとさせたら、
「あれ、おかしいな・・・ん?」
四苦八苦だ。
「こっちのネクタイは?」
「あ、結びやすい。」
慣れていないのであれば、生地は でこぼことしたものの方が結びやすい。
光太郎も気付いたらしく、生地から選択肢を絞って選びだした。
「滅多に着ないだろうから、靴下は2枚あればいいだろ?」
「うん、そうだね!」
これで全部かな?
スーツ、ワイシャツ、ネクタイ、ズボン、靴。
「光太郎、バッグは貸してやるから、それ持っていけ。」
「ありがとう!」
そんなわけで、買い物を終えて帰宅したときには18時を超えていた。
荷物を置き、ラグの上で寄り添って休憩する。
目の前に置いたエアベッドが気になるが、とりあえず休憩だ。
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