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10 3月6日
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朝から簡単な朝食を作った。
目玉焼きとトースト。
ちぎったレタス。
温かいコーヒーをセットしたら、大輔さんにとても喜んでもらった。
「光太郎、すげぇじゃん。」
「ありがとう。」
何度、聞こうと思ったか分からない。
口を開きかけて、閉じるの繰り返し。
ただの友だちなんだと言い聞かせてみたけれど、失恋したと悲しげに笑った大輔さんの顔を思い出して気持ちは暗く沈んだ。
大輔さんが出て行ってから、名刺入れをそっと元の場所へ戻した。
たしかに言えるのは、大輔さんは今は俺が好きだと言ってくれていること。
シャロンの店長さんにも恋人だって紹介してくれた。
でも、心に重くのし掛かるのは、あの名刺入れ。
友だちやお客様ならすぐに返しているはず。
なんで大切に持ってるんだろう・・・。
お兄ちゃんと会うの、今日にしておけば良かった。
でも、今日にしなくて正解だった。
今、会ってしまったら泣いてしまうかもしれない。
たぶん、嫉妬。
俺の知らない大輔さんを、お兄ちゃんは知ってるんだ。
ねぇ、付き合ってたの?
ねぇ、好きだったの?
お兄ちゃんは、いつからカレシさんと付き合ってるの?
ねぇ。
ねぇ。
ねぇ。
「泣きそう・・・。」
ため息をついた。
「大輔さん・・・。」
膝を抱えて、引き出しを見つめる。
明日、会って何を聞こう。
聞きたいことが分からない。
たぶん、恐怖。
だから、考えがまとまらない。
やっと、救ってくれる人を見つけたのに。
光太郎は顔を伏せて、ギュッと膝を抱えたのだった。
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