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「たしか・・・。」
俺が起きると、すでに大輔さんは起きていて、寝坊したのかと慌てた。
炊きあがったお米の良い香りが充満するリビングで、大輔さんがしゃがみこんでキャビネットの引き出しを開けていた。
あ、あの引き出し!!
「んー・・・たしかこの辺に。」
大輔さんが取り出した名刺入れ。
「あったあった。」
食卓の上に置いて、大輔さんは洗面所に向かった。
俺は、死ぬほど驚いて硬直してしまった。
震える手で口元を押さえる。
首にかけたタオルで顎のあたりを拭いながら、大輔さんが席に座った。
「どうした?」
「・・・あ、それ。」
「ああ、お客様の忘れ物。そろそろ予約の入る時期だから店に持って行こうと思って。」
全身の力が抜けた。
・・・よかった。
付き合ってたわけじゃなかったんだ。
泣きたくなるくらい、安堵した。
「慌てて店出た時に、間違って持って帰ってきてたんだよ。」
そう嘘をつきながら、光太郎の顔を見る。
青かった顔色は、血色が戻った。
嘘も方便というが、信じてくれて良かった。
しかし、これの何がここまで光太郎を追い詰めたのだろうか。
あ、名前?
小夜って名前は女の子の名前だ。
女と浮気か付き合ってたかと思ったんだろうか。
「・・・ごめんね、俺、それ見て小夜さんと大輔さんが付き合ってたのかと思ったんだ。」
「小夜さん?」
「うん、俺が前、好きだった人。・・・彼氏さんから目の前で奪われちゃったんだ。」
苦い思い出が横切った。
同時に腹の奥が冷たく冷えた。
「・・・そうか。」
どういう巡り合わせだろう。
光太郎もまた、小夜のことが好きだったのか。
そして、風見から目の前で奪われた。
「うん、でも振られて良かった。大輔さんと出逢えたんだもん。」
ギュッと抱きついてきた体を抱きしめて、山下は深く息を吐いた。
つまり、ふたりで同じ人を好きになり、ふたりとも風見から阻止されて、いまこうやって振られた同士が付き合って生活をしている。
どんな皮肉なんだか。
「・・・光太郎の様子が変だったのは、その名刺のせいか?」
「うん、大切に仕舞ってあったから。」
仮にも好きな人の持ち物だ。
捨てられずに保管していた。
そのうち光太郎のことが好きになり忘れていたが・・・。
「お客様のものだからな、大切に仕舞うさ。」
抱きかかえ直して、額にキスをした。
「不安にさせたな、ごめんな。」
「ううん、勝手に不安になっただけ。・・・聞けばよかったのに、弱くてごめんなさい。」
仲直りのキス。
優しく頭を撫でながら、さてどうするか。と悩んだ。
俺も横恋慕してたことは、内緒にしておこう。
「・・・今日、俺、会う約束してるから、渡しておこうか?」
ん?
「光太郎、今、なんてった?」
「渡しておこうか?って。」
いやいやいや。
「振られた相手と会う約束してんのか?」
「うん、だって4月から同級生になるし。」
・・・複雑だ。
凄く複雑だ。
なんだこの関係?
俺はコテンパンにやられて二度と近付くなと風見から言われているが、光太郎は違うのか?
しかも、同級生?!
あ、そういえば、この前好きだった人のカレシの車で送って貰ったって、あれって風見のことか?!
頭痛がしてきた。
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