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18歳以上ですか?
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そんなわけで俺はお兄ちゃんとご飯を食べに出た。
驚いたのは、大輔さんが先回りしてお店を予約していたこと。
「大輔さん、美味しかったよッ!」
帰ってきた大輔さんに抱きついた。
「お?行ったんだ、にし川。」
「うん!予約してくれてありがとう!」
店の敷居が高くて18歳の男子じゃ潜れないかもしれませんが、財津という子が連れと一緒に来たら個室に入れてあげて下さい。
そう女将に電話をしておいた。
「ホホ。いらっしゃるかどうか分からないのね?」
「良い店だと紹介はしたんですが、まだ若いから怖がると思うんですよ。」
「構わないわよ。いらしたら案内いたしましょう。」
俺が店をオープンした当初からの常連客の女将さん。
板前の大将とともに店を切り盛りしている。
「まだ食べ盛りなんで、お櫃にいっぱい入れて最初から米を出してあげてもらってもいいですか?」
「ふふ、よく食べる年頃だもの。いいわよ。」
俺が男性しか愛せないと知っている女将は、何も言わず察してくれたようだった。
「ふふ、楽しみにしてるわね。」
そんなやり取りをした今朝。
光太郎は案の定、一度入るのを諦めたらしい。
「でもね、お兄ちゃんがせっかくだから入ろうって言ってくれたの。」
「メシ、美味かったろ?」
「うん!なめこの味噌汁も美味しくてね、」
今日でた料理を聞き流しながら、光太郎の頭を撫でた。
「杉様は何か言ってたか?」
「ん?あ、名刺入れ、ありがとうって。」
そうか。
「伝言、伝えてくれた?」
「あ!彼氏さんへの分、忘れちゃってた。LINEするね!」
ぐふぐふ言いながら携帯を操作する光太郎を見ながら顔を洗いに向かった。
多分、許してはくれないだろう。
だが、俺はもう光太郎だけ側にいればいいんだ。
光太郎が小夜と付き合いを続けるというのであれば、俺自身も関係を回復したい。
ゆっくり信頼を回復していこう。
もうあんな荒っぽいことはしなくていいんだ。
だって。
「ぐふ。大輔さん、好きっ!」
飛びついてきた体を抱きとめた。
「俺も好きだよ。・・・お前、そういや健康診断は?」
「あ!そうだった!相談しようと思ってたんだった。」
「呑気だなあ。」
この近くの内科を紹介した。
「行く前日に電話して行けよ?朝メシ食べたらダメって言われるからな。」
「わかった!」
今日の晩飯はカレーらしい。
家庭の味に舌鼓を打って、幸せを噛み締めた。
「美味いよ。」
「ありがとう!」
俺には光太郎がいる。
もう、迷わない。
コイツだけが居ればいいんだ。
「明日の朝もカレーでいいぞ?」
「ほんと?じゃあ、ウインナーカレーにするね!」
バージョンアップ。
「あんまり遅かったら俺を待たずにメシ食っていいんだからな?」
「うん、ありがとう!」
ここには家庭がある。
これからも、ここで。
最後の一口を腹におさめて手を合わせた。
「ごちそーさんでした。」
「ふふ、おそまつさまでした。」
食器をシンクに置いて振り返った。
小さな背中が可愛らしい。
まだまだ成長過程だ。
「光太郎。」
「ん?」
振り返った頭を撫でた。
「ありがとさん。」
満面の笑みを浮かべた光太郎をギュッと抱きしめてから、席に戻った。
「メシ食ったらリフォーム計画を発表するぞ。」
「え?!リフォーム?」
ふたりで暮らしていくために。
目をまん丸にした光太郎を肘をつきながら眺めて、食べ終わるのをのんびりと待ったのだった。
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