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記憶の行方。
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教え方を見ていて、大丈夫そうだと安心した。
杉サンの話をきちんと聞き、教えられたノートの書き方を実践している。
「でね、三権分立ってね。」
成り立ちの背景から説明をしている。
図式化していて、これならシンサクもわかりそうだと思った。
「じゃあ、国会って何してるところかな?」
「んー、法律を作ってるのかな?」
「正解。じゃあ、内閣って聞いたことある?」
「ある!あります。」
シンサクが嬉しそうに答えた。
「内閣って、なんだと思う?」
「総理大臣?」
「総理大臣しか内閣っていないかな?」
エドワードはふたりを静かに見守りながら、時間を確認した。
今日は日帰りだ。
日本に15時に着いて、24時の飛行機で とんぼ帰り。
今が19時だから、20時まで勉強に付き合って、ふたりと食事を摂れば殆どゆっくりする時間は無かった。
それでも、杉サンの穏やかな口調や解説を聞くことによって、今後の先行きに対しての不安な気持ちが和らいだ。
これだけでも、収穫だった。
「大臣って聞いたことはない?」
「あ!ある!!偉い人!」
「ふふ、そうだね。偉い人だね。例えば防衛大臣とか外務大臣とか、文部科学大臣とかって、生徒会長みたいに自分から立候補するものだと思う?」
うーん。
テレビに出てくる大臣さんが、立候補してたかな?
選挙ポスターには『なになに大臣になりたい。』とは書いて無かった気がする。
「違う気がする。」
「じゃあ、どうやって いろんな大臣になるんだろう?」
一生懸命考えながら答えようとするシンサクが可愛かった。
「あなた なりなさいって、命令される?」
「誰に?」
「・・・総理大臣?」
「ふふ、正解。」
なるほど!
よく分かった。
生徒会長が、あなた美化委員長しなさい、あなた体育委員長しなさいって命令するのか。
「じゃあ、総理大臣はどうやってなるの?」
「良い質問だね。」
杉さんの話では、まず国会議員にならないといけないこと。その他条件を教えてもらった。
「あれ?さっきのいろんな大臣は国会議員さんがなるんだよね?」
「違うの。総理大臣が任命する大臣については、議員さんでなくて良いんだよ?」
ええ!!
「一般の人から選ばれた人もいるんだ。大学教授とか、いろいろ。」
へぇ。
「そんないろんな人がいる内閣って、何をするんだと思う?」
「法律つくるのは、国会だったけど。大臣さんは・・・。」
行政?
「総務省とか、外務省とか、防衛省とか・・・聞いたことあるかな?」
「うん、ゴジラの映画のとき防衛省ってでてくる。」
「そうだね、出てくるね。日本の行政を担う各省庁のトップが大臣なの。」
総務大臣
法務大臣
外務大臣
財務大臣
文部科学大臣
厚生労働大臣
農林水産大臣
経済産業大臣
国土交通大臣
環境大臣
防衛大臣
国家公安委員会委員長
復興大臣
ほかにも内閣府特命担当大臣という人たちがいることを知った。
「ね?国会で作られた法律に基づいて、内閣で話し合ったり、政策を各省庁に回して実行したりするんだ。」
ふぉー。
「だからね、例えば、小中高の教科書、体操服、全部タダにしますっていう法律が決まったら、教育に関わる文部科学大臣のもとで文部科学省で働く人たちがどうやって実行したらいいのか考えてその制度を作るお仕事をしてるの。」
「・・・だから、内閣は行政なんだ。」
今日は三権分立を学んだ。
(司法権)(立法権)(行政権)
社会のノートは、右のページも左のページも縦半分にわけて、びっちり書いた。
すごく頭のいい人のノートみたい!
それだけで、おれ、幸せになった。
「さ、今日はこれでおしまい。次は、今日の復習をしてから、次を勉強しようね?」
「杉せんせ、ありがとうございました。」
頭を下げると、杉さんも頭を下げてくれた。
「食事ニシヨウ。杉サン、アリガトウ。」
「いえ、トンプソンさんも わざわざ日本に戻ってきてくださってありがとうございました。」
このふたりがここで食事をする分は、全てワタシに請求するように連絡済だ。
「シンサクのシフトガ決マリ次第、日程ノ調整ヲシヨウ。可能ナ限リ、教エテ頂キタイ。」
「週に2回ということですか?」
「可能ナラ。」
杉サンが悩んでいる。
「考えておきます。では、わたしはこれで。」
「食事ハ?」
「今日は風見が家に帰ってくる日なんです。帰りは22時頃と聞いていますが、温かいご飯を用意してあげたいので、お気持ちだけ頂いて帰ります。」
・・・シンサクに、言ってもらいたい台詞だ。
シンガポールのアパートメントに帰ったらシンサクが居て、手作りの夕食が用意されている。
想像しただけで、幸せな気持ちになる。
目の前で杉サンの口座に謝礼を振り込むと、お礼を言って帰って行った。
「エドワード、おれ、賢くなりたいので頑張ります!」
目の前で振り込まれたお金。
おれの為に、たくさんお金を使わせてしまう。
罪悪感に苛まれて、涙ぐんだ。
「金ハ気ニシナクテ良イ。シンガポールデ共ニ住ム事ダケヲ目標ニ、頑張ッテ欲シイ。」
「はい!」
抱きついてきた柔らかな体を抱きしめてキスをした。
「何カ食ベヨウ。」
「はい!」
一緒に部屋の中で食事をして、つかの間のデートを楽しんだ。
「エドワードさ、エドワード。すきです。」
「ワタシモダヨ。」
さあ、時間だ。
「家ニ送ル。」
「・・・はい。」
別れの時間が近付いて、シンサクが目に見えて落ち込んだ。
全く、可愛いやつめ。
「マタ、帰ッテクルカラ。」
「はい!」
しっかりと抱き合うと、しばらくの別れを惜しんだのだった。
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