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記憶の行方。
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昨日今日と頭がパニック起こしそうな程の忙しさだった。
俺が担当した2階のAホールは、11:30~14:00に一発目。そのあとすぐに片付けて二発目15:00~17:30、三発目が19:00~21:30のギチギチコース。
新人の松岡くんも朝からAホールに入ってくれていて、三発目が始まって乾杯のドリンクを配るところまでお願いして帰ってもらうようにしていた。
「時間。お疲れ。」
こくんと頷いてバックヤードに戻る姿をみて、おや?と思った。
胸ポケットにいれた進行表をちらりと見る。
あと10分は裏に入っても大丈夫なことを確認してから、そっと踵を返した。
「・・・どうした?」
「え?」
顔が赤い。
気になって松岡くんの額に手を当てると、燃えるように熱かった。
「熱、あんじゃん!帰りな。」
「え?・・・ねつ?」
もう!
昼間は顔色は悪くなかったのに。
いつからだったんだろう?!
まだ式は始まったばかり。
自分がここを離れるわけには、いかない。
この前まで高校生だった松岡くん。
見ていて不安で、仕方がなかった。
「誰かお家の人に迎えに来てもらえそう?」
桑原さんから優しく聞かれて考えた。
ううん。
今日は結婚記念日でお父さんもお母さんもお出かけしてる。
お姉ちゃんも、何かの締め切りがあるらしくてお友だちのお家に何日か泊まるって言ってた。
エドワード様は、シンガポールだし。
「今日は、誰もいないです。」
マジかー。
「迎えに来てくれそうなお友だちは?」
頭に浮かんだのは、ふたり。
真由ちゃんと、財津。
受験生で女の子の真由ちゃんに迎えには来てもらえない。
財津も考えたけど、今住んでる場所を知らない。
簡単に頼めなかった。
あ。
杉さん・・・。
「れんらく、してみます。」
「ん。明日のシフト、どこって言われてる?」
「ポーター、です。」
朝8時から16時まで。
3日までポーターで、4日はまた結婚式で10時に、このAホールって言われている。
この10連休は、ほとんどみんな出勤。
てんてんこ舞いなの、知っていた。
「ポーターか・・・。無理するなよ?」
チーフは隣のBかCホールに巡回に行った。
この階の責任者である彼女が戻り次第、松岡くんのことを報告しないと。
チーフに言っておけば、ポーターのチーフに連携してくれるはずだ。
「はい。桑原さん、ありがとうございました。」
頭を下げて、ふらふらと出て行った松岡くんに後ろ髪を引かれながらも、会場に戻った。
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