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初めての挑戦。
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「それ、おれの!返してッ!」
大切なリコーダー。
エドワード様が、おれの歌を楽しみにしてくださっている。
だから、飛行機の中でも指づかいの練習をした。
たぶん、寝ちゃったときに、シートの間に入り込んだんだと思う。
すっかりリコーダーを持って降りるのを忘れた。
気づいたのは、飛行機を降りてすぐ。
通路で気付いた。
「風見さん、忘れ物した!」
「え?!」
慌てて引き返して、飛行機の中に再進入できないように立っているグランドスタッフに事情を説明してもらった。
「seat number F××、He forgot something. 」
そう言っていたら、中が騒がしくなった。
「 A dagger?!」(短刀?!)
「Japanese Knife!」(日本のナイフだ!)
ええ?!何事?!
持ち出されてきたものを見て、ホッとした。
「それ、おれのです!meの!」
グランドスタッフに捕らえられた。
「ええ?!それ、ピーピーなの!返して返してっ。」
腕を掴まれて、身動きできない。
大切なリコーダーを勝手に持っていかないで!
「It is a recorder!!Please open it!!」
風見さんが大声をあげた。
「Recorder?」
「YES!!He brought it in to play it to a lover!He is the first overseas travel!!and airplane for the first time in his life!」
早口で聞き取れないけど、おれのリコーダーを持っていた人は立ち止まってゆっくりと和柄の袋を開いた。
「ha ha ha!Don't let me misunderstand it. 」
「I'm truly sorry. 」
よく分からないけど、腕を離してくれた。
「Does he play it? 」
首を傾げながら、スタッフのひとりがおれを見つめた。
「し、晋作くん。練習したリコーダー吹いて。」
「は、はい!!」
よく分からないけど、プレイって聞こえた。
おれの演奏を聴きたいんだと思う。
「曲はアメイジング・グレイスです!」
「Amazing Grace 」
風見さんが通訳してくれた。
肩幅に足を開いて、大きく息を吸った。
ピーローピロピー、ピーピーピロピー
えーどーわぁどぉ、トンプゥソォン、
(Edward Thompson)
しんがーぽぉるー、行ったぁー
(He has gone to Singapore.)
おれぇ、いつかぁかならーずぃぃく、
(I will go to meet you someday.)
いとーしーのーえどわぁーっっ!
(Beloved Edward.)
だーいーすぅきぃ、えどぉわぁど
(I'm in love Edward)
いーつぅーかぁ、くらすぅぅ
(Let's live with me)
そのーひーをーゆめみるぅー
(my hope.)
ピーローピロピー、ピーピーピロピー
ピーピー、ピピピー、ピーピー
ピーピーピーピーピロピーピーピー
風見さんが通訳してくれた。
演奏が終わったと同時に拍手が送られて嬉しい。
スタッフの皆さんは、みんな笑顔だ。
「enjoy!」
手を振って持ち場に戻ったスタッフの皆さんにお辞儀をした。
うん!エンジョイします!
膝をついた風見さんが、涙目でおれを見上げた。
「二度と!リコーダーは国内から持ち出すな!」
「はい!」
顔を覆った風見さんが心配で、声をかけた。
「風見さん、大丈夫ですか?」
「・・・大丈夫だ。」
なんだか顔色が悪い。
おれがしっかりしなきゃ。
忘れ物はしない!
気をつけよう。
心に誓った晋作だった。
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