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急き立てる。
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「お帰り。」
「た、だいま。」
父さんが笑顔で迎えてくれた。
緊張しながら、いつもの席に座る。
「にいちゃ、にいちゃ。」
ぐりぐりと頭を胸に擦り付け甘えてくる大吾は、すごく可愛かった。
優しく撫でてあげながら、父親を見つめた。
「元気、だった?」
「元気だよ。光太郎は?」
「元気。」
話の仕方が分からない。
でも、父さんがたくさん話しかけてくれた。
こんな感じの会話だったかな。
こんな風に喋ってたかな。
大吾が膝の上でウトウトする頃には、俺の緊張もほぐれていた。
「光太郎さん。」
「はい。」
お茶を出してくれた母親は、父親の隣に座りながら微笑んでくれた。
「良かったら、もっと帰ってきて。ずっと、ごめんなさい。」
・・・え?
驚いて顔を見つめると、頭を下げられた。
「光太郎さんのことをきちんと息子として育てたかったのに、気がつけば距離を作ってた。・・・私がもっとぶつからないといけなかったと反省したの。」
光太郎さんが出て行ってから、ずっとお父さんと話し合ってきたのよ。
「父さんも悪かった。光太郎の実のお母さんから引き離したその罪悪感と、2人の間の溝をわかりながらも、遠慮してた。」
すまない。
ふたりから頭を下げられた。
「や、やめて。・・・ごめん、ごめんなさい。俺も、篭ったから。」
家族団欒が怖かった。
その中に自分は要らない存在だと逃げていた。
みんながレジャーに行く時、あえて行かなかった。
イベントのとき、手巻き寿司やすき焼きが食卓に並んでも、怖くてひとり後で食べた。
ずっと逃げていたのは、俺だから。
「ごめんなさい。」
頭を下げた。
「ん・・・、にいちゃ、おいたしたの?」
ふふ。
おいたって久しぶりに聞いた。
「そう。ずっと、おいたしてたの。」
小6の夏の日から。
「にいちゃも、だいごといっしょ!コラッていわれた?」
ギュッと抱きしめた。
うん、自分にコラッて言ったよ。
ごめんね、大吾のことを放っておいて。
「ふふ、ママもパパも おいたしたのよ。」
「みんなで ごめんなさいする?」
顔を見合わせて、笑った。
みんな泣き笑いの顔になっている。
「じゃあ、大吾。せーので言って。」
せーの。
「「「「ごめんなさい。」」」」
一歩を踏み出した。
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