アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
夏だけ出会う僕と彼
-
僕と彼が出会ったのは、僕が小学4年生で、彼が小学1年生の時だった。
両親に連れられ、母方の実家にはじめて行った時だった。
当時、僕の学校は夏休みに入ったばかり。
いつもは父方の実家に行くのだが、母方の実家には行ったことがなかった。
理由は母が田舎を好きじゃなかったからだ。
母の実家は昭和時代で時が止まっているような村で、豊富なのは自然ぐらいだと母が苦笑しながら言っていた。
だけど今回、さすがに実家の家族から、顔を見せろとの催促が来たらしい。
さすがに10年以上、実家に帰っていないことをマズく思ったらしく、今回の夏休みは母方の実家で過ごすことになった。
僕は少なからず、楽しみだった。
僕の住んでいる街は都会だし、父方の実家も田舎ってほどじゃなかった。
だからか、大自然に憧れを抱いていた。
それにまだ顔も見たことがない、親戚達に会うのが楽しみだった。
何度か電話や手紙・ハガキなどでやり取りしたことがあるぐらいで、交流がほぼ無かったから。
でも実は、この帰省にはちょっと裏があった。
聞かされたのは、すでに新幹線に乗り、電車に乗り、バスに乗り、タクシーを乗り、実家の邸に向かって歩いている途中だった。
何でも母の兄の長男が、ちょっと難しい性格をしているらしい。
そのせいか学校でも浮いていて、一緒に住んでいる家族や親戚にも心を開いてくれないようだった。
なので歳が近く、今まで接したことがない僕になら、興味を持ってくれるんじゃないかっていう話が、母と伯父の間で交わされていた。
将来、実家を継ぐ立場だから、もう少し他人と交流を持ってほしいらしい。
要するに遊び相手になってほしいとのこと。
僕は笑顔で承諾した。
僕にとってはイトコだし、年下のコと遊ぶことなんて滅多になかったから、楽しみにしていた。
実家の邸は小山の上にあるので、坂道を歩く。
母の言った通り、民家よりも自然が目立っている場所だった。
でも空気は美味しいし、緑がキレイで、セミの声が心地良かった。
夏休みいっぱいここにいられると思うと、心は高鳴った。
…しかし実家の邸の前で、呆然となった。
ウチは都心に建つそこそこ高級なマンションに住んでいた。
父の実家は普通の二階建ての一戸建て。
しかし母の実家の邸は、まさに昭和という時代がピッタリな、大きくて広い和風の邸だった。
…ここで肝試しなんてやったら、雰囲気ピッタリだな。
そう思いながら門をくぐった。
伯父夫婦は玄関で待っていてくれて、僕達を歓迎してくれた。
…が、母はさすがに説教されていた。
どうも田舎嫌いは生まれ付きらしく、終始渋い顔で伯父と対戦していた。
その間、伯母がここのことを説明してくれた。
ここ、宮乃原みやのはら家は先祖代々・地主だった。
そしてこの土地は今では枯れてしまったものの、昔は金が取れたり、温泉が出ていたらしい。
しかしすっかり取り尽してしまい、金は底をつき、温泉は今では実家のおフロに使うぐらいしか出ないという。
それでもおフロは立派らしいので、楽しみだった。
今では農業をしており、それで細々と食べているらしい。
けれど一応、跡継ぎが必要なのだと言った。
それは伯父夫婦の長男に決まっているものの、消極的過ぎて将来がちょっと不安らしい。
上に5人も姉がいるせいで、最近では跡継ぎを放棄するようなことも言い出しているらしい。
僕にはあんまり関係ない話だけど、跡継ぎ問題は大変みたいだ。
昔のように長男に継がせたい伯父夫婦、だけどそれに反発しているイトコが何だかかわいそうだった。
僕だって生まれた時から将来が決まっているなんて、ちょっとイヤだ。
とにかく僕にはイトコに友達になってほしいという伯母の言葉に、素直に頷いた。
ふと邸の中を探索してみたくなった。
けれど母は伯父とバトル中で、父は疲れていた。
なので1人で探検に行って来ると言って、僕は部屋を出た。
歩けば歩くほど、邸の古さが分かった。
でもこういう家も良いな。
古いけど、人が過ごしてきた歴史みたいなのが感じられる。
しかし僕は油断していた。
ウロウロしているうちに、迷子になってしまったのだ。
「あっあれ? ここ、どこだろう?」
辺りを見回しても、同じ光景にしか見えない。
ここまで広い家の中を歩くのははじめてで、まさか迷うなんて思わなかった。
周囲に人の気配は無い。
どうしようかうろついているうちに、奥へと来てしまった。
薄暗く、何か出そうな雰囲気に、泣きたくなってくる。
「ううっ…。だっ誰かいませんか~?」
泣きそうな声を出すも、反応無し…。
「だっ誰かぁ~」
それでも声を出さなきゃ、泣きそうになっていた。
ところがとある部屋の前で、いきなり襖が開いた。
「うわっ!?」
驚いて後ろに引っ繰り返ってしまった。
中から出てきたのは、陽に焼けた肌に、少し伸びた黒い髪、大きな茶色の目をした子供だった。
僕も子供だったけど、その子は僕より頭1つ分小さかった。
黒い生地に、金色の蝶が刺繍された浴衣を身にまとっているその子は、独特の雰囲気を出していた。
「…アンタ、誰?」
「えっえっと、玖城くじょう雅貴まさたか」
「玖城? …ああ、雅子まさこ叔母さんの1人息子?」
「えっ? 母さんを知っているの?」
「まあね。オレは宮乃原由月ゆづき。よろしく」
そう言って手を差し伸べてくれた。
小さくても温かい手を取って、僕は立ち上がった。
「よっよろしく。もしかして…雅月まさづき伯父さんの子供?」
「そっ。そしてアンタのイトコ」
ああ…と言われても、伯父さんの何番目の子供かサッパリ分からない。
母いわく、伯父夫婦には6人の女の子に、2人の男の子がいるという話。
最初に5人の女の子で、次に例の男の子、そしてまた男の子で、最後が女の子。
因みに長女はすでに20歳で、末の子はまだ1歳らしい…。
僕の住んでいる街ではとても珍しい、大家族だ。
この子は…女の子にも見えるけど、男の子かもしれない。
でも浴衣を着ている上に、髪が少し伸びているし、名前も女の子っぽいから、もしかしたら女の子かな?
噂の男の子は僕より年下だけど、女の子だって小柄な子はいる。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
1 / 13