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02-01
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屋根なんて無い屋上は開放的で、そこに2人でいるのが好きだった。何か特別なことをする訳でも無く、ただボーっとする。俺以外には愁しかいない、数十歩歩けば果てが来てしまう位に小さいけれど、空が広がる広い世界。そこは何処よりも居心地が良かった。
「ルウちゃんいつまでここに居るの?」
「お前が出ていく時で良い」
「おっけ」
だけれどずっとここにいる訳にもいかない。本当はずっとここに居たいけど、それを堪えて愁の問いに答えた。
ポケットから取り出した端末を見ると兄貴から帰りが遅くなるってメールが来ていた。それに返信のメールを打っていると、隣から紫煙の匂い。愁のものは少し甘くて、煙たくなければ好きだった。
「あいつの化けの皮どうやったら剥がれるかなぁ…鎌かけてもどうせ全部すっとぼけるんだろうし。何か弱点が…」
誘導作戦は失敗に終わり、次の策を練っている愁。策、って言うかあれは椿のことが知れて、あわよくば…ってその程度のつもりだったんだろうけど、あいつの笑顔は期待を裏切って崩れることは無かった。もう無駄だと潔く諦めたは良いものの、元々椿を観察する目的でやっていたことだから案は一切ないようで。弱点があればと愁は言うが、今はその弱点すら見つかっていない。
「…作る、とか」
「弱点を?」
「…ん」
思い付いたことを言ってみはしたけれど、自分で言ったことにこう言うのはあれだが、何と言うか…餓鬼が思い付くようなことと言うか。事実をでっちあげるって、小学生の虐めか。
「…嗚呼、良いかもね」
と、思ったんだけど愁から好評だった。これは予想外だった。「馬鹿だろ」って却下されると思ったのに。正気かお前とさえも思った。だってそんなん、直ぐ嘘ってバレるだろ。向こうには周りからの信頼もあるんだし。
「んー…まぁ、やり方変えれば結構効果あるデショ」
「…そう?」
「例えばそうだなぁ…。ルウちゃんの色仕掛けとか、さ」
「…あ?」
例として出されたそれに俺はポカン。俺の?色仕掛け??何がどうなってそうなった。
「それを良い角度で写真に収める。あいつが襲ってるみたいにね。…こん位したら化けの皮1枚くらい剥がれるだろ。そうしたら落とすのは楽勝だな。1度剥がしてしまったらそう元には戻らない」
やっと理解。写真は強いわ。椿が信頼されていても"証拠"があったら簡単に椿が否定しても信じられなくなる。
思い付きで言ったことで直ぐにそんなこと考えれるんだからやっぱお前の頭の回転は速いんだと思う。けど1つ突っ込ませてくれ。
「んで俺が参加することになってんだ」
そう、そこ。何で俺の色仕掛け。そりゃあ俺相手にやったとなるとネタとしての威力も上がるでしょうけども。俺はぜっったいやりたくないぞ。頼まれても断じて拒否する。
「え、否だって陰で写真撮らないと意味ないじゃん」
「ふざけんな馬鹿」
「あいたぁ?!」
その返しに思いっきり愁の頭を殴る。
そこは分かる。写真の必要性は理解している。俺が文句言ってんのはそこじゃなくて。問題は"俺"がやるって所だ。
何で俺が股開きに行かねぇといけないんだ。俺男だぞ。…あ、俺男じゃん。あいつも男じゃん。
「女に頼めよ」
そうだ、先にまずこっちだった。あいつは男で、色仕掛けなら異性の方が良いんじゃないか。…って俺が言ったら「分かってないなぁルウちゃんは」ってどっかのアニメみたいに人さし指を左右に振って言いやがるもんだからまた殴りそうになった。
「生徒に手を出したプラス同性相手ってのが良いんだよ。ゲイに限らずホモに偏見ある奴の方がまだ多いんだからさ」
「じゃあそこら辺の男を狩って来いって」
女よりも男の方が良いって言うのは理解した。でもそこで何で俺を使ってくるんだよお前は。
お前なら直ぐ"罠"作れるだろ。…脅せば。聞いた感じ、ここの生徒で男子なら、椿がその気になろうがなるまいが関係ないんだろ?ただ、椿がその生徒を襲っているように見える写真が欲しいだけで。
「だってルウちゃんは男知ってるじゃん?…まぁ、俺とだけだし男が好きな訳じゃないけどさー…。男知らない…って言うか知識ない奴が男に色仕掛けするよりはリアリティある気がすんだけど、どう?」
「どう?」って俺に同意求められても困るんだけど。俺にとってはリアリティも糞もない。それっぽいの撮れたら良いじゃんって思うんだけど、愁はそれじゃあ嫌らしい。
「あいつルウちゃんの耳に触ってたし…さ。それも含めたら向こうに気が無くてもぽくなるじゃん?」
「っひ…?ふ、んぁぅ…っ」
「…クク、かわい。色仕掛けっつっても"こんな風"に触られることはないから安心して良いよ~」
床に手を付いていた愁の手が、俺の太腿を撫でながらズボンの中心に移動して行って、そこに辿り着くと包み込むようにして撫でられた。その刺激にぶるる、と体が震える。声は抑えきれなかった。最悪。2人だけで良かった。
「…ぁ、やめ、ろ…!盛んな馬鹿…!!」
「…とォ…?怒んないでルウちゃん~、可愛いからつい出来心」
愁が股間を揉む手を中々止めてくれなくて、でもこのままだと触られてるモンが反応してしまいそうだから顔面目掛けて拳を振り上げた。それを俺の股間を揉んでいた手で余裕で受け止める辺り、流石だとは思う。出来心でセクハラしてくるのは意味分からないけど。
「ま、もしマジでヤられそうになったら助けるから。ルウちゃんを危険な目に合わす気はないよ」
そりゃあそうだろうよ。そうじゃなくて俺にリスクしかないならお前のこと本気で殴ってるわ。
後、お前。そうなったら助けるだけじゃないだろ。"ついでに脅す"が忘れてる。その時は写真なんて撮らなくても脅せるもんな。「生徒にこんなことして良いんですか~」って。つまりどっちに転んだって愁の良い方に運ぶってことだ。
上手く行かなくたって、収穫が一切ないなんてことはないだろうし、そうなったら"落とす前"の段階の案ならきっとこいつはポンポンと出てくるはずだ。まるで蜘蛛の素。そしてそれに1度引っ掛かれば抜け出せず、食われ、蜜を吸われる。
…話が脱線した。まぁ、兎に角、だ。
「俺はしねぇからな」
何で好きでもねぇ―て言うか寧ろ嫌い―、お前みたいな関係でもねぇ奴に演技でも股を開かないといけない。そんなサービスしないぞ。俺はそこまでサービス精神旺盛ではないからな。
「ざーんねん。次の考えるか」
俺がそう意思表示をすると案外あっさりと諦めてくれた。次の作戦が似た様なものじゃなければ良いんだが。
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