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02-05
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「今は付いてねぇのもあんけど安定してんのは、えっと…?眉と、目の下んとこ…と眉間と、鼻。口と舌は数ヵ所、で…、へそと…乳首と…」
「…待って、何個開けてんの?」
「覚えてねぇ、全部開けたの中学の時だし」
質問されてお前がしつこかったから答えたのに、答えたら答えたで頭を抱えられた。意味が分からなかった。だって俺は望んでた回答を出した筈なのに。
「全部自分で開けてんの?」
「ニードルで開けたり、知り合いにそう言う奴居るから開けてもらってた」
「…やっぱお前、かなりの自傷癖あるよ」
「…そんなんじゃ、」
「じゃあ何で開けた。言っとくけどな、中坊で、つーか大人でもそんなに開けねぇよ。異常だよお前の数は」
「……どうだって良いだろ」
数とかそんなの今まで気にしたことなかった。全部気がついたら開けてたし、開けてもらっていた。ボディピアスが好きとか、そう言うのじゃなくて本当に気がついたら。
異常だ、とか言われても、知らねぇよ。いつも気がついたら開いてんだから。そう言われたところで俺はどうしようもできない。俺には、何が可笑しいのか分からない。
興醒め。そんな感じに椿は溜息を吐いて、俺の手を縛っていたネクタイ解いて俺から離れると、真剣な眼差しを向けてくるそいつ。
…何なんだよ、それ。今更良いセンセイになったつもりかよ。
「家の人は?何も言わないのか。…お兄さんもいるんだろ」
「…兄貴と一緒に住み始めたのは去年の終わりからだ」
「…はぁ?」
家族なのに、今まで一緒に暮らしてこなかったと言う俺に理解出来ないって目を向ける椿。嗚呼、理解出来なくて良いよ。それで俺に何か不利益なことがある訳でもない。
兄貴にはもう開けるとこなんて残ってないだろ、とかそんなんは言われた。でも、俺が変だとは言ってこなかった。愁にも言われたことない。だから椿がここまで気にする理由が見当もつかなかった。
―まるで、俺が間違ってるみたいに―
俺は変じゃない。おかしくない。異常じゃない。それなのに、何でそんな目向けられないといけないんだ。気持ち悪かった。
「…じゃあ、親は」
「知らねぇ」
「知らないって、あのな…。もうちょい真面目に…」
「親なんて、知らねぇ。兄貴と去年の終わりから一緒に暮らしてる。…それが答えだろ」
真面目に答えろと言うけど俺は真面目で、椿が望んでたものじゃあないんだろうけどそれ以上は言いたくなかった。あんな家、思い出したくない。俺の家族は、兄貴だけで良い。兄貴だけ。兄貴が作ってくれた。兄貴しか、いない。
「…もう良いだろ。ヤるんならヤれよ。もうどうでも良い。愁ともヤってることだし。相手が1人増えたところで変わらねぇよ」
今までの抵抗が嘘みたいな変な諦めがあった。この話題はもう止めて欲しかったのもあるし、お前が俺をどう思っているかは知らないが、そんなにヤりたいならすれば良いと思った。根掘り葉掘り聞かれる位なら、こうされてる方がマシだと思った。
だから、そう言う意を込めて自由になった両手を広げてやると椿は何故か傷ついたような顔をした。
―イミガワカラナイ―
ヤったら、って言ってんのに椿は何もしてこない。先まであんなにしてきたのに。抵抗しなくなってヤり易くなったんじゃねぇの。
「…何、しねぇの」
「……んー、自暴自棄になってる奴を犯すのは趣味じゃないな」
先までヤる気満々だった癖に。趣味がどうだこうだ言うとか今更だ。セフレ探してたんならヤりゃあ良いのに。挙句に自暴自棄、とか本当意味が分からない。俺はお前がそうしたいならしたらって、もうそれで良いって。そう言っただけなのに。
…まぁ、ヤらねぇならそれに越したことねぇけどさ。
「…あっそ」
くしゃくしゃになったネクタイを首にかけて結んで、立ち上がる。縛られていたそこは赤くなっていた。
「次はねぇと思えよ」
椿を睨んで、俺は屋上から出ていった。今回はどう言う心境の変化か知らないが止められはしなかった。
ヤられても良いって思ったのは今回だけ。面倒になったから同意しただけ。こんな奴に次もまた手を出されて堪るか。まぁ、もう手なんて出してこないんだろうけど。趣味じゃあなくなったみたいだし。椿にどんな評価をされようと関わってこないなら願ったり叶ったりだ。
結局戻ってこなかった愁だけど、あいつは、"悪魔"は。化けの皮が剥がれた椿を知ったらどう言う顔をするんだろうな。
あいつの本性を知った今なら分かる。愁のあれはただの"同族嫌悪"だと。"落とせる"と思ってたけど、同族なら無理だろ。"そう言う"手はお互い知り尽くしてるんだし。
…多分俺にぶーぶー言ってくるか、そこらの奴で苛つき発散?そんで、ヤられかけた俺に甘い蜜を吸ったかの如く笑ってくるんだろう。「ご馳走様~ネタありがと~」とか言って。
嗚呼、未来が目に見える。
だけど、あいつは本当にどうしようもない"屑"だけど、"愁"はちゃんと俺の事考えてくれている。あいつは『前の家』のことであったり、そう言った俺が絶対に触れて欲しくないことを俺をからかうネタに使うことは決してしない。あいつなら、俺の不幸を嗤った後にでも「大丈夫?」って心配してくれるんだと思う。
あいつは"屑"だけど同時に"優しく"もある。人を"不幸"にすることはあっても"さらに不幸"にすることはなかった。人の痛みを想像出来る奴だった。そんな奴だからこそ、俺はあいつと一緒にいる。家族である兄を除いて、俺を本当の意味で理解してくれているのは愁しかいないと分かっているから。
多分俺は愁に依存してるのだと思う。でもそれは愁も同じだろう。"自分"の為に互いに依存しあう、そんな歪な関係。
だけど、それが"塵"の俺達には丁度良い関係だった。
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