アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
02-06
-
3年前にこの高校に赴任した。俺から見る生徒は、俺が高校生だった頃と同じで背伸びして、けれど幼い所が残る、そんな奴等だった。悪く言えば餓鬼臭い。
教師と生徒が恋愛とか、よく漫画とか小説とかでは題材にされるけれど、そう思ってしまうのだから現実ではとてつもなくでかい年齢差ってのは幾ら足掻いても埋めることはできないのだと思う。まぁ、生徒教師に限らずとも歳の差カップルはかなりの年上好きと年下好きとじゃないと出来上がらない気がする。餓鬼臭さがなくなっても、世代って言う価値観の違いは付きまとってくるだろうし、何で考えの合わない人間と一緒に歩んでいかないといけないんだとさえも思う。
俺はどちらかと言えば年上の方が好き。それか歳の近い年下とか。好きって言うのは好感が持てるかどうかの話であって、恋愛感情ではなく。
つまりは、前置きが長くなったけど高校生なんて子供には守備範囲外どころか苦手意識すらあった。
この高校の前の学校で生徒に言い寄られたことがあった。それはその学校が俺が教師としての初めての職場で、歳が離れ過ぎていて生徒とどの位の距離を保って接したら良いのか分かっていなかったせいだったんだけど、それが正直鬱陶しくて、転職。この高校ではそんなことにならないように他人と一線引くための壁も前よりも高くした。今回は多分上手く行っていている。俺基準で。前の学校よりも面倒事は減ったし、まぁ良しとする。
今年度に入る前、俺以外の教員が揃って落ち込んでいて、それは絶望に近かったかもしれない。ムンクの絵みたいな顔で今にも叫びそうなんだから笑ってしまった。あ、勿論心の中で。
そうなっている理由を聞くと、噂の"悪魔と狂狼"が2人揃ってこの高校に来年度入学する、とのことで。確か、2年とちょっと前から噂になっていた少年2人だった。ここは偏差値もそこそこ良いから、まさか試験をパスするとは思っていなかったんだろう。話を聞いたら余計に頭を抱えているそいつらが滑稽に見えてきた。
優等生ばかりのこの学校に、最恐の不良が2人。今にも辞職届を出しそうな教師達には悪かったが楽しみで仕方がなかった。俺は人をからかうのが趣味の悪く言えば"屑"と呼ばれるであろう人間だった。自分で言うのもあれだけど。不良だなんてからかい甲斐があり過ぎる位だし、"最恐"って言われる奴等がどんな奴等なのかって興味もあった。だって、最恐って。中学生の餓鬼がそう言われる位周りから怖がられてるって中々に面白い話だった。
年度が替わってから受け持つ教室は分かるのだけど、皆嫌だ嫌だと口を揃えて言っていた。それはもう神にすら祈りだしそうな勢いで。無信教の癖に。
でも、それはそれでチャンスだと思った。周りが嫌だと言うのなら、俺もそれに同意しなければ俺に回ってくる可能性は高くなる。生憎俺は寧ろそいつ等に会うのが楽しみで、このチャンスを逃す気はなかった。
「私は彼等の担任でも構いませんよ。今年は受験生の担任でしたし来年は1年が良いですねぇ」
嫌ではないと曖昧なことは言わず、問題児が来る1年が良いと印象付ける様に。校長も偶々その場にいたし丁度良かった。
そして、某日。とうとう受け持つ教室を知らされた。それは期待通り2人の担任だった。周りは「何かあったら相談に乗りますから」とか「無理しないように」とか、俺を心配する声を掛けてきた。俺はそれに対してテンプレートな感謝の言葉を並べながらも内心口角が上がるのを抑えるのに必死だった。
――時は流れて入学式当日。期待していた現れなのか普段よりもこの日までの時間の流れがゆっくりだった様な気もして。柄にもなく高鳴っている心臓に笑えさえもした。
入学式会場は人が多過ぎて2人の姿は見つけられなかったが、そう言うものかと探すのは諦めた。入学式後に教室に生徒を集まらせて学校のことを説明するんだけど、こいつ等のことはそこで見れば良い。楽しみは最後にとっておく、ってことで。
式が終わって教室に向かおうとすると、心配する声を色んな教師から掛けられた。恐らく過去最高に気分が良いのに邪魔された気がしてならなかったけど、立場上のこともあって笑って気持ち何て一切籠ってない礼を言った。
教室に入ると1番後ろの廊下側の端の席で、隣の奴と向かい合って携帯を弄っている奴がいた。周りが距離を置いてあそこだけ異空間だからあれが、噂の、"最恐"。
そいつ等が視界に入っただけで"教師"の俺はしない笑みを浮かべそうになって、慌てて仮面を押さえた。
自己紹介をしながらも、気付かれない程度に2人を観察してみる。
1人は青色のメッシュを入れている少年。魔咲愁。確かこっちが"青の悪魔"。噂通り青色がトレードマークらしかった。座席順違うじゃねぇか。勝手に変えやがって。
曰こいつは『人の不幸は蜜の味』な奴らしく、俺と同じ"屑"。一目見てその噂は本当だと雰囲気で分かった。何だろう同族嫌悪?あまり仲良くはしたくない。ちょっかいかけても直ぐ見抜かれそうだしなぁ。相性は悪そうだった。
もう1人は黒髪の重たい髪をした少年。名前は狼城昴流。消去法でこっちが"黒の狂狼"何だろうけど、第一印象は『マリモ』。こいつが本当にそうなのかと疑ってしまう位だった。
髪に無頓着なのかもさぁっとしていて目何て見えやしない。ただ辛うじて鼻から下と、髪の隙間からチラチラと耳が光って見えるだけだった。光ってるのはピアス?よく見たら鼻や唇にもついていて、その量は多かった。髪型は根暗っぽいのに何ともまぁアンバランスな。
ちょっとだけ左側の方の前髪が短くて、狼が頭を動かすと微かに左目が見えた。その目は真っ黒で影に覆われていたからかもしれないけど光りが無くて、どこか冷たいものだった。けれど逆にそれに惹かれた。
雰囲気はどこかプライドが高そうで、"一匹狼"って言葉が似合いそうなやつ。悪魔と違って弄りがいがありそうで是非とも仲良くしたい。ただ1つ。マリモじゃなけりゃあなぁ…。そこだけがマイナスポイントだった。後挙げるとしたら歳の差が大きすぎることだろうか。5歳位までの差だったら文句なし?
試しに注意するって体でピアスに触ってみた。そうしたら露骨に嫌そうにされた。どうやら耳は弱いらしくて小さく喘いだ。その声は想像していたよりも高かった。良くみりゃあ身長も悪魔よりは低いし厚着で分かりにくいけど華奢だし。本当にこんなんで喧嘩できるのかと不思議に思った。
声を漏らしてしまった狼は、はっと俺の方に顔を向けてきたのだけれど、顔を上げたって肝心の目は見えやしない。でも雰囲気的に俺がその声を聞かれたんじゃないかって不安に思っているようだったから、気付いてないふりをしといたら安堵する素振りを見せて、それが嗜虐心を擽らせた。何だよその反応、可愛過ぎじゃあないか。
こいつの髪の下はどうなっているんだろう。擽ったかっただけでこの反応ならもっとしたらどうなる?怒るだろうか、先みたいに慌てて俺の反応を窺ってくるんだろうか。正直、俺の嗜好にはドストライク。もろタイプの奴だった。それは期待以上で、もっとこいつの色々な反応が見たくなった。
…って思ったんだけど、結局2人のやり取りを聞いている内にそう言う関係なんだろうなぁ、と察して同族嫌悪とは言え、大切な恋人さんを横から…なんてなる気にはなれず、彼等の関係が恋人ではないのだと知る前の俺は仲良くなることは諦めた。
流石にそこまで道を踏み外してはいなかった。嗜虐嗜好がある時点で人道的とは程遠いけど。でもまぁ、仲良くはならないけど俺がちょっと楽しむ程度にはさせてもらうことに。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
14 / 38