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02-07
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その翌日。俺は朝から生徒指導で校門の前に立っていた。
生徒指導と言っても、優等生ばっかだから注意何てすること殆どなく、生徒に挨拶する為に突っ立ってるも同然でサボっても良かったのにそうしなかったのは2人が朝から来ることを期待してだった。流石に2日目ですっぽかしたりしねぇよな、って心配も勿論あった。でもそれは杞憂に終わり、もう直ぐで予鈴が鳴りそうになった頃に2人は来た。俺は楽しみは最後まで取っておきたい傾向にある様で昨日と同じで魔咲から声を掛けた。
魔咲は俺に笑顔を、付けている仮面をどうにかしろと言う。本当、だから同類って嫌なんだ。俺はバレない様に装っているのに、同じ手を使う奴には直ぐバレてしまう。一応すっとぼけたけどそれがいつまで出来るか分からない。
―あれ、て言うかこいつ…―
間近で見ると髪の艶やかさが他の奴等とは違った。良い意味で。髪を染めているんだからもっと痛んでいても良い筈なのに。こんなはっきりとした青色ならブリーチもしているだろうし。それなのに、バサバサしていなくて滑らかだった。凄ぇ髪を大切に扱っているんだと思う。
どうすればこんなんになるんだかと思いながら青く染められた部分に触れて、染め直せと注意。ここまで大事にしてるんなら思い入れもあるんだろうし別に俺個人はこのまんまでも良いと思うけど立場上そうはいかず。まぁ、嫌そうな顔を見る目的が無かったと言えば嘘になるが。
でも今回は何かまずったようで、狼城が俺の腕を掴んで、僅かにしか見えない左目で睨んできた。その時、思わず仮面が崩れそうになった。見た目によらず、凄ぇ力が強かった。力が緩んだ時を見計らって振り払った時、咄嗟の反応だったんだろうけど力を加えてきて、その反応の速さも獣かと心の中で苦笑い。最後は強引に行って何とかいけたけどこれ、本気で力比べしたら負けるかもなぁ…。こんな体にどこにそんな力が蓄えられてるんだか。
「…ン、ぅ…っ?」
お待ちかねの狼の方はとりあえず、昨日と同じで耳に触れてみた。本当に弱いらしくてびくって体が跳ねる。これでバレてないって思ってるんだから可愛いよなぁ。そう言うの俺みたいな奴煽るだけって分かってねぇのかな。
一応はこいつのピアスも注意するんだけど、昨日と違ってした後の雰囲気が違っていた。敵意むき出しの、目。ちょっとやり過ぎた?否、でもこいつの変化は触った後じゃなくて、注意した後だから関係ない?
「――ぎぜん、しゃ」
―…あ?―
ぼそぼそっと言われたその単語に、素が出そうになった。ギリ抑えれた。よく耐えた、俺。
急に何だ、喧嘩売られた?俺何か変なこと言ったっけ?まぁ、偽っているとこは確かに偽善者かもしれねぇけど。
そう、突っ込んでやっても良かった。でも、俺を『偽善者』と称した狼城は、何だか悲しそうで、寂しそうで。そんな反応されると思っていなかったから困惑した。そうこうしている内に狼城は魔咲と一緒に校舎の方へ行ってしまって、俺はそれを呼び止めることは出来なかった。教師としてあいつに何を声を掛ければ良いのか分からなかった。素であれば突っ込めたのに、不便なものだと思う。
S.H.R.で教室に行けば狼城と魔咲の姿はいなかった。登校している筈のそいつ等が、いない。それは紛れもなく拒絶だった。先のことを考えると仕方がないのかもしれない。教師として言わなければいけなかったことだったのだけど、結果として俺はあいつの地雷を踏んでしまう形になった。俺が悪かった―何が地雷だったのか正直言ったら分かんねぇけど―ってことであいつ等を探そうとはしなかった。何も知らない"教師"としては?会ったら注意しねぇといけないんだけども。
2時間目の授業が終わって、3時間目は授業が入っていなかったから休憩兼煙草を吸いたくなって屋上に向かった。屋上は生徒は立ち入り禁止で教師しか鍵は使えないのもあって俺の隠れ喫煙所だった。そんな軽い気持ちで階段を上った。
…そう、だったんだけど、どう言う訳か鍵が開いていて、閉め忘れたかな、と違和感を覚えながらも中に入ってみると、いた。
狼が。
そりゃあもうぐっすりと眠っていた。座って寝てるけど腰痛くならないのだろうか。丸くなっている姿は可愛らしいですけども?何だろう、犬見てるみたいで?
何処でサボっているんだろうとは思っていたけどこんな所にいたなんて。やっぱり鍵をかけ忘れた記憶はないから、こいつが開けたんだろうか。魔咲いないし。そっちは一体どこにいるんだか。
丸まってぷうぷうと気持ち良さそうに眠るこいつを起こすのは忍びなかったが、そんな恰好で寝ていると体を痛めてしまいそうだったし優しく撫でて、声を掛ける。撫でられるのがこの狼は好きらしく、俺の手に擦り寄って、ふにゃんと頬が緩むこいつは不覚にも可愛いと思った。それは弄りがいのある可愛さとはまた違っていて、何だろう、胸がきゅんってくるような。あまり抱いたことの無い感情。
「あにき…?…んー…ふふ、あにき…」
こいつはどうやら俺を寝惚けて兄だと勘違いしているらしく、お兄さんのことを呼ぶ声は幸せそうだった。お兄さんのことが余程好きなようだった。
―『兄貴』―
彼には起きていてもこんな風に笑うのだろうか。こんな風に甘えるのだろうか。この前髪の下で、幸せそうな表情をしているのだろうか。
―あの"最恐"の狼がブラコン、ね―
兄に甘える狼は、噂では想像できないほど可愛いものなんだろう。それが微笑ましく、クスリと笑みが零れた。
――けれど、その反面で何故かそれが気に食わない自分がいた。
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