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03-06
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「……は??」
その回答は更に予想外で、思わずポカン。多分、今年……否、人生で一番の驚きだったと思う。
「一目惚れだ」
さらっと椿はそう表現し直すが、そこはしなくても良いんじゃあねぇかな。そこよりも重要なとこあると思うんだけど。
こいつが俺に惚れた?しかも一目惚れ?何が何だかさっぱりだ。言う相手を間違ったんじゃあないか。俺練習台?訳が分からなくて頭が空回り。驚きの余り考えるのを放棄したくなったのはこれが初めてのことじゃないだろうか。
「…それは、からかってんのか」
やっと言葉に出来た思考はそれだけだった。否、そう思いたくもなるだろう。予想もしてなかった相手から告白されたら仕方ない。
「本気だよ。何で冗談で一回りも違う、しかも男で生徒に、んなこと言わないとといけねぇ。からかうなら俺にデメリットしかなくない?」
俺が椿の気持ちを疑ってかかると、椿は真剣な目つきで俺に本気の度合いを主張しだした。声の抑揚の具合からして嘘っぽくはない。
それに椿の言っていることも一理あった。俺は別に男――同性が恋愛対象では無い。向こうもその可能性は頭に入れていることだろう。余程の馬鹿でなければ。しかも、生徒。年も離れ過ぎている。そんな最悪な条件が揃いまくっているのに冗談でも告るやつはそうそういないだろう。いるとしたらそいつは鋼メンタルだ。否、ここはもう揃えて救いようの馬鹿…って言うべき?
こいつの言い分から本当であることは理解した。けれど受け入れるかどうかはまた別の話であって。
同性愛に対しての偏見はない。好きにやれば良いと思う。だけどそれは対象が自分でなければ、であって。そう言った目を向けられることに中々実感が湧かなかったのもあるし、俺はゲイじゃあねぇから戸惑いがあったのもあり。
それで回答を渋っていると、椿に顎を持ち上げられて、椿と目が合った。
椿の瞳は俺と違って日本人らしい、けれど少し薄めな焦げ茶色。俺への気持ちを隠そうともしない熱の籠った、目じりが垂れているそいつの目からは、色気すらも感じられて男の俺でも目眩がしそうだった。
こう言ったことをされると女はドキドキするらしいとか、相手を意識してしまうらしい、とか。そう言うことを愁から聞いたことはあったがその時は、んな馬鹿な話があるかと間に受けていなかった。しかし、今なら分かる気がしなくもない。顔が整った奴を間近で見たら、そりゃあ緊張してしまう。
「好き、守ってやりたくて仕方がないくらいに好き。お前に会うたびにその思いが強くなるくらいに好き」
「…っ」
そして、こいつはどう言う訳か俺をどん位好きなのか語りだした。耳元で、好き、好きと囁く声はどんどん熱を持って行く。こいつに惑わされているような感覚に襲われた。俺の耳に当たるこいつの吐息とか、唇とか。それを意識してしまうとゾクゾクと背筋が震えた。
逃げようとしてもこいつは追いかけてきて、まるでどれだけの気持ちで俺を想っているのか伝わるまで止めないと言われているようだった。
「ちょっと生意気なとこも好き。耳が凄ぇ弱いとこも。…嗚呼、喋り下手なのも可愛くて好き」
「も、良い…っ止めろ!」
「実際は弱々しいとこも。お前の全てが好き、好き…好き。大好き」
どれだけ抵抗しても椿は愛の言葉を囁くのを止めなかった。その甘い声から生み出される痺れが、脳をショートさせる。男、女関係無しにこんな風に言われたことなんてねぇから、どうしたら良いか分からない。分からない、って言うか寧ろ恥ずかしい。目を閉じて早く終わってくれと強く願ってみても、こいつの口は止まる気配を見せない。
「俺がお前のことどれだけ見てるか、どれだけお前を守ってやりたいって思ってるか……伝わった?伝わってないならもっと言ってあげるケド」
「ぁ、や…わかった、から…!も…、ぃや、だ…」
やっと終わったかと思えば、まだ出し尽くしていないらしい。俺の返事次第でもっと言うと宣言され、俺は必死で「好き」と連呼しようとする椿を止めた。
これだけでも、十分すぎる…否、俺のキャパを超しているのにこれ以上だなんて俺には耐えられなかった。
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