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03-11
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「く、っそ野郎……!!」
「すっごい今更なこと言うな?」
「ぅあ…っ?え、な……??」
「…ん、腰細いな。一番奥の穴使ってんのか」
俺が睨めばこいつはやけに楽しそうな顔をする。残忍な悪役がしそうな顔だ。言っちゃあ悪いが教師って役柄には不釣り合いのその顔に、一瞬気圧されそうになった。今までの顔も中々に屑だったけど、この顔は…もっと。表現し難いけれど、自身の身の危険を暗示させるものと言えば良いのか。兎に角こいつが隠していたどす黒い所のもっと奥深くを知ってしまった気分になった。
そのたかが一瞬。されど一瞬。ガチャガチャと金属が何かとぶつかる音が鳴り我に返る。それは下の方から聞こえてきて、それを確かめるために視線を椿から動かすと、言葉を失った。と、同時に見なければ良かったと後悔。先までの音は俺のベルトから鳴っていたもので、ぴろーんとバックルに通していた筈のベルトがただの"革紐"になってしまっている。
「ていうかこれ結構切って……、」
「へぁ…っ?!」
そんでするる~っとベルトループから紐が抜けて行く。別に高価なものでも無い、そこらに売っている何の変哲もないベルトなのだが、椿は暫くそれを見つめた。そして何を思ったのか、はっと俺の方に視線を寄越したのとほぼ同時に、横腹に直接何かが触れた。それは俺の服…ではなくて、椿の手。さわさわと何かを確かめるように腹回りを撫で回すそいつの手は今までの厭らしいものではない。一体何なんだと内心こいつの触り方に戸惑った。
「……着膨れしてたのか」
「ぁ?きぶ…?」
「ウエストが、細すぎる。あばらが浮いてる。ちゃんと食べてるの?お前」
「ぇ…、たべて、る……けど、」
「三食きちんと?」
「だ、ったら何…??」
「……そう」
急に変なことを聞いてくるものだから驚いた。「ちゃんと食べてる?」…とか、愁みてぇなこと聞くなよ。訳が分からないまま問いに答えると、今度は安堵する。ますます理解不能だ。ド屑な一面を見せたその直後に、まるで別人のように優しい表情をする。俺を弄んでいる癖に、俺を心配する。こいつの言うことやること矛盾しまくりだ。
「倒れないようにな」
「え、ぁ…?うん……?」
「一回崩れちまうとなかなか立ち直れねぇぞ?」
―何だ、それ―
椿の忠告に違和感があった。俺の身を案じでいるのに嘘はない。それは分かる。けれどそう言うことじゃあなくて。何でこいつはそんな"言い方"をする?その言い方じゃあ、お前は。
「……自分のことかヨ」
お前が過去に、小食が故に体調を崩したことがある……みたいで。気のせいなら、それで良い。そうであっても俺の知ったことじゃあない。ただ、こいつの体が筋肉質で、がっちりしていて健康的なことはパッと見ただけでも分かるし、それを見ると信じられねぇなぁと思っただけで。
「俺の心配してくれンだ?優しいねわんちゃんは」
「な…っ?!」
俺の問いへの答えはyesでもnoでもなくそれだった。嫌味を含んだ物言いに少しカチンときたが、こいつの顔を見て文句言うのを止めた。そりゃあもう、嫌味言うにはぴったりな屑らしいド畜生の顔だったけど、こいつの目がちょっと陰っているように見えて。嗚呼これ地雷だったかって。嫌いな奴相手でも態々触れられたくないこと触れようとも思わないし、突っ込むのは止めた。
「……でも俺なんかより心配しないといけないことあるんじゃないの?」
「は…?」
「俺、お前に告ったの忘れてない?それとも、意味分かってない?俺の『好き』ってさ」
「っぐ…、ぁ゛ァ…?!」
「――こう言う、好きなんだよ。昴流」
ぐぐ、と力を込めて俺のを握られ激痛が走る。こいつを睨んだら、悪役どころか魔王がしてそうな笑みを浮かべていた。嫌味たらたらな言い方も、この顔も凄ぇムカつく。ムカつくんだけど……それ以上に苛々するとこがあって。
「……"気持ち、悪ィ"……!」
「あ?……っが、ァ…っ゛」
体勢的に力を入れることは難しい。だから急所を狙って、込められるだけの力で拳を握って椿の腹をぶん殴った。これで何とも思わない奴は腹に鉄板仕込んでいる奴位で、サイボークでもない椿はずるずると腹を抱えてその場に座り込んだ。先は腰が抜けちまったけど、今は間が空いてくれたお陰で椿の支えがなくともちゃんと立っていられた。
力を入れ辛かったとは言っても、急所に遠慮なくぶちこんだんだんだ。こいつの力が強くたって、防ぐ暇が無かったんならそんなもの関係ない。結構なダメージを負った筈で、案の定椿は腹を押さえて動かない。それでも、それを分っていながらこいつの胸倉を掴んだ。
気持ち悪い。男にちんこ握られるとか有り得ねぇ。この、人を弄ぶような言い方も、態度も気に入らない。そんでもって、"今"のこいつはもっと気色悪い。
「…何がしてェ」
「…ぁ、?」
「俺を、"わざと"怒らす真似してんじゃねぇぞ」
本当にこいつのやりたいことは俺の理解の範疇を超えている。俺を好きだと何度も何度も嫌だと言っても耳元で囁き続ける。かと思えばお仕置きだ何だと訳の分からないことをほざき始めて。そんで、今度は嫌味ったらしく俺を笑って、"暴力的"になる。ころころころころこいつの顔は変わるけれど、ただ1つ。それらを分類できる決定的なものがあるならば。
最初の2つはこいつの"本心"を少なく感じられたことだ。俺を好きって気持ちが嘘じゃねぇってこと、俺が睨んでんのに楽しそうなとこ。それはこいつの"目"が本当だと、言っている。でも最後のは、こいつの目が陰っていて全然見えてこない。こいつが屑野郎で、楽しんでいるのなら、今までと同じで、もっとこう……目が生き生きしている?筈なんだ。なのにそうじゃない。楽しんでいないのに俺を怒らすような真似をしてくるのは、無意味な行為な気がしてならない。否こいつにされんの受け入れた訳じゃねぇんだけど、今は一発だったからまだしも、俺がぶち切れていたらどうするつもりだったのか。今まで通りどうにかなると思っていたのか。否それはないか、実際こいつ俺に一発食らってんだし。
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