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懐かしい夢を見た。
隣には、いつも強気なのに誰より優しい音を奏でる先輩。
出来の悪い俺にいつも熱心に教えてくれた、大好きな先輩。
香水とはまた違う、ほのかに甘い香りを近くに感じて幸せだった。
けれど先輩はどこかに消えていってしまう
あの時と同じように。またあの日を繰り返すかのように
「ごめん、俺が悪かった。ちゃんとするから
先輩のこと守るから…行かないで、先輩」
腕を掴んでそう呼び止めると先輩は、あの日のように
泣きそうな顔をして笑った
一瞬だけ、フワッとあなたの匂いに包まれた気がしたけど、それもすぐに消え去ってしまった
…もう、何年も見てない夢だったのに
誰かを好きになってしまった…そんな罪悪感から来たものだろうか。
もう傷つけたくないのに、誰も。
そっと目を開けると、日は登っていてもう朝だったんだと気づく。隣に氏原はいない
…帰っちゃったのかな。
せっかくの休みなんだからもう少し一緒にいたかった…なんて思ってみたり。
もう一度目を閉じ、寝返りをうったその時
ppp...
軽快な音楽でスマホが震えた。
「…んだよ。朝からやかましいな寝かせろ…」
ちらっと横目でそれを見て、名前も確認しないまま
眠い目を擦りつつそれを手に取った。
「…はい」
「おはようございます、まだ寝てましたか?」
「え?うじはっ…や、今起きたとこっすけど」
「ほんとですか!よかった~っ…プツンッ」
…は?何だコイツ…。
電話の先の声は昨日寝る直前まで聞いていたものだった。
謎のモーニングコールなんてかましてきやがって。
そんなことを思ったのもつかの間
ガチャンと勢い良く開く扉に驚き振り返ると
そこには寝起きの目には眩しすぎる笑顔の氏原がいた。
「朝ご飯がちょうど出来たので、冷めないうちにいかがですか?」
「…まじで」
「まじです!」
新妻かよって突っ込みそうになるのを抑え、
重い体を起こした。
そういえば微かに美味しそうな匂いするかも。
朝が少しだけ好きになった気がした。
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